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摘んでまるぐ

「あ、ゴミ出し行ってきまーす」


私はバイトのゴミ出しが好きだ。
珍しい人と思われたい訳ではなくて、本当に。

いくつもの飲食店が入っている駅ビルのゴミ捨て場は、セキュリティがしっかりしていて暗証番号を入れなければ入れない。アルファベット1文字と数字5桁。2つのゴミ袋を片手で持とうとするが毎回落とす。
重いドアを開けて入ると色んなものが捨てられている。それらを見ながら何があったのか想像するのが好きだ。掃除機が5台あった日はとても楽しかった。

奥にある生ゴミを捨てる時の部屋の中の部屋、バックインバック的な所に行く。
そこはドアを開けた瞬間からシャンプーの匂いがするのだ。あの柔軟剤のcmのように目隠ししてここに来たら、生ゴミ回収場所だとは誰も分からないだろう。このギャップも毎回楽しみになっている。

バイト先へ戻る道には警備員がよく歩いている。
その人に挨拶できたらラッキーポイント。
金曜日にしかいない目が合うと敬礼してくれる陽気なおじさん警備員はレアラッキーポイント。
すぐ歩いて行ってしまうから、敬礼し返せたらミラクルポイント(虹色)。


戻ると、またデリヘル嬢が来ていた。
ここ3ヶ月以上、ちょうどいい場所なのかデリヘルの待ち時間にほぼ毎日バイト先に来ている。
というのは店長の勘だ。
無言でアイスコーヒーの食券をカウンターに出され、「お作りしますので、少々お待ちください。」と言っても片耳にスマートフォンをくっつけたままだ。返事はないし、頷きもしない。自分の少し乾燥している黒髪の毛先を見ている。

丸めた布団を括りつけたキャリーバッグを引く人。自動ドアを通った瞬間に分かる酸っぱい匂い。つい酸素を求めて息が詰まる。
ビニール袋から小銭を掻き出し、150円のソフトクリームを買っていく。
その150円をどこでどうやってどのくらいの時間で集めているのか聞いてみたいがその勇気はない。
「食券機消毒しといてー」と店長の声。

画面のグラフを見せながら話す男と、細かく頷いてメモを取る女。

「これカラオケのサービス券なんすけど、カウンターのとこ置いてくれないっすか」
ストライプのシャツに水玉のネクタイをした男。

映画さながらの登場人物が来店することを日々実感する。

この世界には色んな人がいます。
多様性の時代です。

そんな「色んな人」の中に自分もいることを忘れないで、偏見と現実を個で楽しむことができるなら、もっと何かが良くなる気がする。


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