創作話「夏よ、ありがとう」
9月は秋さんの誕生月です。
なぜかまだ訪れがありません。
まだまだ暑くて蝉が鳴いています。
「いつまで経っても僕の出番が無いじゃないか」秋さんは舞台袖どころか、今だに楽屋に入ることすら許可されていません。怒り狂った秋さんは太陽さんに相談しました。
「太陽さん、この季節外れの空気を読まない夏くんを早く追い出してくれないかな」
太陽さんは翌日早速夏くんに会いました。
早朝から夏くんはギンギンギラギラです。季節年齢でいうと100歳は超えているでしょうか。少し頭髪は薄いがマッチョで黒光りしてます。
「僕も早くこの世から消えたいよ」
夏くん本人もなぜ地球上にまだ存在しているのかわからないでいました。
「夏くん、君は何かにお願いされてまだ残ってるのかな?」
太陽さんは上から眺めるように訊きました。太陽さんも夏くんと一緒に地上から照らしているので、責任の一端はあると思っています。
「何かって?」夏くんは目をキョロキョロさせてます。
「例えば、お盆迎えをして貰えなかった亡き人間からとか」
太陽さんは腕組みをして考えました。
「9月下旬にもなって酷暑を続けているのは何か理由があるのか、って」
「酷暑じゃない。残暑だ。イメージが悪くなるだろう」
どっちでもいい、と太陽さんは言った。
(続夏とでも言おうか)
「いや、理由なんか無いよ。確かに、これだけ残り夏を消化すると地球人たちから疎まれて、来年は下手すると僕は出れないかもしれない」
「ということは・・・」
太陽さんと夏くんは目を合わせました。
「来年は春春秋冬だな」
太陽さんの言葉に夏くんがそれとなく頷きました。
「温度上昇がなければ、地球様にも優しい太陽さんと呼ばれるな」
太陽さんは自分で言っておきながら(地球に優しい)というフレーズに気を留めた。
夏くんもオッという顔を向けた。
「ただ、僕がいないと経済的にまた落ち込むよ」
「誰が?」と秋さん。
「環境大臣とか、経済復興大臣とかな」
「エアコンは冬にも使うけどな」
「いや、夏場のエアコン消費力って凄いよ」
夏くんは自分のおかげと言わんばかりにエアコンのコンの箇所を強調した。太陽さんはコンがキンに聞こえました。
そんな様子を空の片隅にいる秋さんが覗いて見てました。
「おい、四季レボリューションじゃん!」
秋さんはこう雄叫びを上げると、冗談じゃないと言わんばかりにフーっと息をしました。
自然に出た溜息か、ただの呼吸か分からぬ空気は夏くんを遠いお空まで吹き飛ばしました。
「バイバイキーン」
夏くんはこう別れを告げました。
太陽さんは驚きました。
ちょうど、そこを通りがかった地球人(アメリカ人)が、太陽さんに聞こえるように、
「グッバイ・マイサマー!」
と爽やかに言い放ちました。
すると、涼風が新しい季節を告げました。
秋さんは安堵すると共に天に手を合わせてましたとさ。
(太陽は何処へ?)
【おしまい】
あとがき
最後まで読んで頂きありがとうございました。
数日前から頭に浮かんだストーリーをどうしても書きたかったのです。
お付き合い頂き、心より感謝申し上げます🙇♀️