君に出逢えたことは生まれ変われた証【散文】
遥か先に見える水面に三つの生命体が映る
朧げな記憶は君を繋ぐ強い運命(さだめ)
忘れたくなかった 忘れるはずなどなかった
あの時脳裏に焼きついた台詞が今甦る
悲しい出来事
後悔の念だけはなぜか消し忘れてしまった
自分だけが生き残ってしまった激しい嫌悪感
本当は悔やみきれなかったはずなのに
深すぎる悲しみが自我すらも崩壊させた
妻も娘も息子も亡くした悲しみは怨念
生まれ変わったのか いやいつ自分は居なくなった 本当の自分探しの為にココにいるのか
泣きながら妻子を探す
向こう岸から手を振っている姿
「おーい」
夢か幻なのかそれとも
無造作にポケットから手を出す
諸手を振って何かを叫ぶ
最初誰だか分からなかったよ
三者三様の笑顔
全員の足元は浮いている
やっぱり全員この世にはいない
そう呟きうつむいた
もう一回全員で暮らそう
息子が無邪気に言い放った
もういいんじゃないパパひとりで頑張ったよ
娘はなぜか血の気が引いたような冷静さ
出逢えたからもういい
なぜか納得していた
不思議と自然に
もういい
もう充分
満足はしていないけれど
再び巡り合えたから
君に出逢えたことは生まれ変われた証だから
そうこれでいい
【了】