失うことは生まれかわること【雑文】
毎日書くことで、毎日何かを失っている。文章は意図していないところで一人歩きをするものだ。作者の思い通りに文章が読まれることはほとんどない。幸か不幸か、自分が書いた文章は必ず誰かが読む。傷つけないように書かれた作品でも誰かを傷つけてしまっている。それに作者は気がつかない、永遠のテーマ。
読者が思う通りに読んでくれたらどれだけ楽だろうか、と考えたことがある。もしそうなったら美辞麗句を多用して、世の中は美しいもので溢れていることを強調するに違いない。起承転結も起伏も要らない「世界のはじまり」に似た煌びやかな春夏秋冬を描いてみよう。いっそのこと作者も読者も実は同一人物だったと優しい嘘をついてみようか。私は貴方に愛される為に生まれてきた事しか考えたことが無い、などと囁いて世界中の人々の歯を浮かせてみたい。
【了】