2024年6月の記事一覧
母の夕焼け【ショートストーリー】
あんな夕焼けは見たことがない。
恐ろしいほど包み込まれそうだった。
思わずそう叫んでしまいそうな聖母のような優しさがそこには広がっていて、沈む間はずっと亡き母を思い出していた。
母は看護師の仕事をして僕を女手一つで育ててくれた。
「拓也くん、いい? ここでおとなしく待っているんだよ」
その日も僕は母の勤務する都内の病院に来ていた。学校が終わってから、毎日こうやって母の近くに来ていた。
いやんズレてる【ショートストーリー】(青ブラ_第3回変態王決定戦参加作品)
「わたくしカブラギ商事の葛城桂子と申します」
「はっ」
「かつらぎ・けいこです!」
「ボヘミア〜ン?」
「はあ? あっ、すみません」桂子は、言われることを分かっていつつも恥じらった。
「はあ、とは何ですか。顧客に向かってその言葉遣いは?!」
「だって、山根社長あまりにもふざけているものですから」
「・・・・・」山根は思わず黙りこくった。
「私がカツラだからって少し軽く見ていません
神々のオッサン達【ショートストーリー】
病室にいる間はずっと、何か自問自答を繰り返していた。誰かの声掛けがまるで病室を彷徨う羽虫音のようにも聞こえていた。
ーまるで、暗くまどろむような空間だった。
「裕人よ、どうしてこうなった?」鬼沼のようなドス黒い声だ。
「前日、仕事中に軽い眩暈がして、そのままフラーっと歩いたら三途の河が見えて・・・」裕人は2mもの大柄な体躯を揺らせて言う。
「第一だな、お前は死人リストには入っていないの