見出し画像

人間の心の真相をじっくりと描く(篠田節子編)

小説紹介第九弾!

「仮想儀礼」 篠田節子

2008年発売

本日紹介するのは現在も精力的に作品を書き続ける女性作家・篠田節子さん。

既に紹介済みの(宮部みゆき)(桐野夏生)さん達と並び、大ベテラン作家の一人です。

1997年に(女たちのジハード)で直木賞も受賞済みです。

ほぼ全作読破してますし、良い作品沢山ありますが、悩んだ末今作を一押しします。

物語は役所のエリートコースから転落した男と、女で人生をしくじった男二人が、手っ取り早い金儲けのために新興宗教を起こそうと目論むところから始まります。

彼らが拘ったのは女性の孤独や罪悪感などのネガティブな感情と、胸の奥に隠れた欲望をテーマにする事。

その試みは見事に当たり、会は予想を超えて大きくなっていきます。

その事で巨額な金が動く様になり、その金に目を付けた有象無象の悪党たちが群がり出します。

一方女性会員の欲望も膨れ上がり、二人ではコントロールできなくなっていきます。

そこに目を付けた新興大教団の教祖。

大きくうねり出した波は、想像を超えるエンディングを迎える物語。

今作の10年ほど前にオオム真理教の地下鉄サリン事件があり、インチキ新興宗教関係の小説が沢山出た時代。

その中でも抜きんでた一冊だと思います。

現在も日本には18万3千もの新興宗教があるそうです。

弁当箱並の厚さの上下巻なので、読むのしり込みすると思いますが、流石の筆力で一気読み出来ます。

既にNHKでドラマ化もされているそうです(観てないですが)。

それでは篠田作品のマイベストスリーを紹介します。

第三位 失われた岬 2021年 最近の作品です。戦時中に極秘に軍事目的で建てられた断崖絶壁にある謎の施設。戦後放置された後、そこに人智を超えた不老不死の薬を作る集団が居ると密かに噂が広がります。その場所に惹かれた人間が皆その後行方不明になります。その謎を探る物語。

第二位 弥勒 1998年 海外でクーデーターに巻き込まれ、山奥の収容所で奴隷の様な扱いを受ける日本人が、命からがら逃げだした先の廃寺で古びた菩薩像に出会う物語。神の存在を問う渾身の作品。

第一位 仮想儀礼 2008年 個人的にも宗教関係の小説大好物なんです。その中でも今作はずば抜けております。日本人は何故こんなにも新興宗教に嵌るんだろう?その答えを求めて何十冊も読んだけど未だに答えは出ません。

三作ともかなり深い内容のテーマの作品。一見難解で読みにくそうなんだけど、そこをサラッと読ませる篠田さんは本当に凄いと思います。どれも大長編なんで、時間がある時にじっくり読んで欲しいですね。


いいなと思ったら応援しよう!