初めて買った安部公房氏の書籍
18歳の冬。
受験の為、東京に向かう飛行機を待つあいだ。空港の本屋に立ち寄った。
なんとなく受験のプレッシャーを逸らしてくれそうな、気晴らしにいい本が欲しかったのだ。
井上ひさし?靖?太宰治?夏目?
どれもピンとこなかったが、ふと
『教科書に載っていた、あの作品の作家をまた読んでみたい』
という衝動に駆られてしまった。(あれ?気晴らしか?)
そして、みつけたのです。
安部公房氏の随筆集『笑う月』を。(この中には、教科書に載っていた「公然の秘密」も収録されています)
つまり、私と安部公房氏のセカンド・インプレッションは、物語《小説》という枠ではなく創作者の発想《随筆》という人間的な領域だったのです。
当時の読んだ印象はあまりよく覚えていませんが、ドライな目線からくる批評じみた文章は私の好奇心を刺激して、飛行機やホテルのなかで何度も何度も読み返した記憶があります。
こんな面白い人が、かつて日本にいたのか!
貪り尽くすというのはこのことだと、今になって思います。
そんなこんなで私は晴れて浪人生の道を進むのでした。
(ま、そもそもそんなに勉強しなかったのが…)