リザ・プロジェクト

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最近の記事

岸田國士戯曲の紙風船の退屈さ

仲間内で集まり、週1回ワークショップだの持ち寄った戯曲を読んだりだのといった稽古をしています。 本番がなく、見知った仲間内だからこそできるストレスフリーな稽古場での発見というのは刺激的なものです。 久しぶりに、岸田國士の戯曲の紙風船をやりました。 ただなんとなく、台本を持って立ちながら読む俳優さんとの稽古の中で、ひとつ大きな発見がありましてメモとしてnoteに綴ります。 紙風船の夫婦が終始感じているエネルギーというものを言葉にすると「退屈さ」なのではないだろうか? いや、今日

    • ハロルド・ピンターの難しさその2

      前回に引き続きハロルド・ピンターを上演した際痛感した、ピンター戯曲の難しさのお話です。 2回目は英語で書かれているという点です。 (ここから先は決して、ピンターを翻訳し、日本に紹介してくださった翻訳家の皆様を批判するものではなく、あくまで私の主観によるものですのでご了承ください。) まず、ピンター氏がノーベル文学賞を受賞した理由を、日本語版のWikipediaで参照します。 「劇作によって、日常の対話の中に潜在する危機を晒し出し、抑圧された密室に突破口を開いたこと」 そして

      • ハロルド・ピンターの難しさその1

        好きな作家を挙げろと言われましたら、まずハロルド・ピンターをあげます。 リザ・プロジェクトのACT1&2はハロルド・ピンターの「A kind of Alaska」「One for the road」だったわけですが、やってみて痛感したことがあります。 これはハロルド・ピンターが、ヨーロッパのイギリスで、英語を使って劇作したユダヤ系の人物という前提が、根底に無ければ、ほぼ上演が難しいということです。 ハロルド・ピンターという名前はヨーロッパ圏の方ならほぼほぼユダヤ系とわかる名前

        • 棒になった男が終わって…

          棒になった男が、終演して1週間が経ちました。 改めて、この作品に関わっていただいた全ての方々ありがとうございます。 そして公演を支えてくれた全ての物資、全ての概念にありがとうございます。 今作は、映像での配信および記録映像は作っていませんので、現状での完成は皆様の思い出の中にしかありません。(個人的には思い出のなかに留めた方が「作品」にとっても幸せだと思います。) お客様のご意見は様々で、面白かった、面白くなかったという様々なご意見を賜りました。 つまり賛否両論ですね。

        岸田國士戯曲の紙風船の退屈さ

          「棒になった男」との出会い。

          2008年、専門学校舞台芸術学院に入学して3ヶ月がたとうとしていた7月。 1期上の先輩の発表会で観たお芝居が「棒になった男」だった。 正直な感想としては、よくわからなかったというのが本当のところだ。 そして、作者が安部公房氏ということもあり、「棒になった男」の文庫本を買った。 しかし、まったくわからない…むしろ、一緒に文庫本に書かれた「友達」や「榎本武揚」の方が面白いのだ。 だが、だが、つまらない訳ではなかった。 友達や榎本武揚より何か複雑なテーマと批評がある気がしてならなか

          「棒になった男」との出会い。

          初めて買った安部公房氏の書籍

          18歳の冬。 受験の為、東京に向かう飛行機を待つあいだ。空港の本屋に立ち寄った。 なんとなく受験のプレッシャーを逸らしてくれそうな、気晴らしにいい本が欲しかったのだ。 井上ひさし?靖?太宰治?夏目? どれもピンとこなかったが、ふと 『教科書に載っていた、あの作品の作家をまた読んでみたい』 という衝動に駆られてしまった。(あれ?気晴らしか?) そして、みつけたのです。 安部公房氏の随筆集『笑う月』を。(この中には、教科書に載っていた「公然の秘密」も収録されています) つまり、私

          初めて買った安部公房氏の書籍

          初めて読んだ安部公房氏の作品について

           私が初めて安部氏の作品を読んだのは高校生の時でした。  タイトルは「公然の秘密」(新潮文庫、安部公房作「笑う月」にて収録)。この作品を授業で扱ったのが、初めての安部公房体験でした。  どことなく灰色で白黒の世界を連想させ、冷たくて奇妙な感覚を感じていたことを記憶しています。 "弱者への愛にはいつだって殺意がこめられている"  それはチューニングが合うように、私の思想に深く入っていきました。  分かるという共感ではなく、自分が見透かされてしまったような気持ち…。私の中にあ

          初めて読んだ安部公房氏の作品について