鬼の予言 筆仙の系譜
場所は中国、降霊術の一つ筆仙にハマった少女が予言を成功させる、そして他人を呪殺することも成功させるが、大金と引き換えに少女は鬼へと姿を変える。
広州の片隅にある古びた町で、李麗(リー・リー)という少女が暮らしていた。
彼女は、普通の少女でありながら、何かしら異質な魅力を持っていた。
ある日、彼女は偶然にも古い書物を手に入れた。
その書物は、代々家に伝わるものであり、そこには「筆仙(ビセン)」と呼ばれる降霊術について詳細に書かれていた。
筆仙とは、魂を降ろしてその魂に未来を予言させたり、他人を呪うことができる古代の儀式だった。
好奇心旺盛な李麗は、すぐにその書物に夢中になり、夜な夜なそれを実践し始めた。
彼女は、筆と紙を用意し、静かな夜にろうそくの灯りだけで降霊を試みた。
最初の夜、何も起こらなかった。しかし、数日後、彼女が友人の未来を尋ねたとき、筆は独りでに動き出し、予言を書き始めた。
友人が驚愕する中、その予言が次々と現実になっていった。
李麗の噂は瞬く間に広がり、彼女の家には相談者が次々と訪れるようになった。予言が的中するたびに、彼女はますますその力に魅了され、次第に強い欲望が彼女の心を支配し始めた。
そして、ある日、一人の男が訪ねてきた。
彼は金持ちの商人で、娘を病気から救うために李麗に大金を渡し、呪いの力を使ってライバルを殺して欲しいと頼んだ。
李麗は迷わなかった。
大金を受け取ると、その夜、筆仙を呼び出し、商人のライバルを呪殺した。
翌朝、その男は心臓発作で亡くなったと報じられた。
李麗は成功を喜んだが、その夜、彼女の部屋の空気は一変した。
夜更け、ろうそくの灯りが一瞬にして消え、闇が彼女を包んだ。
突然、筆が激しく紙の上を滑り出し、見たこともない文字を描き始めた。
恐る恐る紙を見た彼女は、そこに恐ろしい予言が書かれているのを発見した。
「鬼が近づいている。お前の欲望が、己を鬼に変える。」
その瞬間、李麗は冷たい手に触れられたような感覚を覚えた
。鏡を覗くと、彼女の顔は徐々に鬼の姿に変わりつつあった。
肌は青白く、目は血のように赤く輝き、鋭い牙が彼女の口元から覗いていた。
彼女は必死に元に戻ろうとしたが、筆仙の力はすでに彼女を捉えて離さなかった。
呪いの力に取り憑かれた李麗は、もはや人間ではなく、欲望の化身として永遠にさまようことになった。
彼女が求めた大金は、今や何の価値もない虚しいものであり、彼女は自らの行為の結果として鬼へと堕ちていった。
広州の町では、夜遅くに一人で出歩くことを恐れるようになった。
李麗の姿を見たという者は誰一人として戻ってこなかった。彼女の呪いは、今もなお広がり続けているのかもしれない。
終
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