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怖い話 通学路の神社

通学路の神社

通りゃんせ 通りゃんせ
ここはどこの 細通じゃ天神さまの 細道じゃ
ちっと通して 下しゃんせ御用のないもの 通しゃせぬ
この子の七つの お祝いにお札を納めに まいります
行きはよいよい 帰りはこわいこわいながらも通りゃんせ 通りゃんせ

現在20歳の会社員、日菜子さんが、10年前に体験した話だ。
日菜子はいつも、通学路の途中にある小さな神社を避けたがっていた。 
古びた鳥居をくぐると、何かが背後から迫ってくるような、不気味な気配を感じるのだ。
特に、一人で神社の前を通ると、
必ずどこからともなく子供の声で童謡「通りゃんせ」が聞こえてくる。
初めてその声を聞いたとき、日菜子は体が凍りつくような恐怖を感じ、それ以来、できる限りその場所を避けて通るようにしていた。
ある日、学校で「こっくりさん」が流行し始めた。
クラスの女子たちは興味本位でこっくりさんを行い、日菜子も誘われるままに参加してしまった。
ゲームが終わった後、10円玉をどうするかが問題になった。
こっくりさんに使った10円玉は「呪われている」とされ、普通に使うのは危険だという噂が広まっていた。
そこで誰かが、あの神社の賽銭箱に10円玉を入れるべきだと提案した。自然と、その役目は日菜子に回ってきた。

日菜子は嫌だった。あの神社には近づきたくない。
しかし、彼女の好きな啓介君が一緒に行ってくれると言ってくれたので、しぶしぶ引き受けることにした。
啓介君はクラスのムードメーカーで、彼と一緒ならどんなことでも乗り越えられるような気がした。
放課後、二人は神社に向かった。夕方の薄暗い時間帯、神社はいつも以上に不気味に感じられた。
鳥居をくぐると、周囲の音が突然消え、静寂だけが二人を包んだ。神社の石段を上り、やがて賽銭箱が見えてきた。

日菜子は啓介君と目を合わせ、勇気を振り絞って10円玉を賽銭箱に入れた。その瞬間、再び「通りゃんせ」の童謡が、かすかに聞こえてきた。今度は明らかに、二人のすぐ近くからだった。

「聞こえた?」啓介君が囁いた。
日菜子は小さく頷き、心臓が早鐘のように鳴っているのを感じた
。とにかくここを離れなければ。
日菜子は恐怖で押しつぶされそうになりながらも、啓介君の手を握り締め、その場を駆け出した。

二人は必死に走った。鳥居を抜け、表通りまであと少しというところで、日菜子は何かが変だと感じた。
握っていたはずの啓介君の手が、妙に冷たく、固くなっていたのだ。
振り返ってみると、啓介君の姿はどこにも見当たらない。
ただ、自分が握りしめていたのは、冷たく乾いた彼の手だけだった。

日菜子は立ち尽くし、混乱と恐怖で頭が真っ白になった。
その時、また「通りゃんせ」の歌が、どこからともなく流れてきた。
今度は、もっと近く、まるで耳元で囁かれているかのように。

「啓介君…?」彼女は震える声で呼びかけたが、返事はなかった。
手だけを握りしめたまま、日菜子は恐怖に包まれ、その場に立ち尽くしていた。

手だと思って握りしめていたのは、天神様のお札で
啓介君の姿は無かった。
日菜子は怖くて啓介君を探しに戻ることができず、家に戻り母親に相談すると、もしかすると啓介君も家に戻っているかもしれないから、もう少し経ってから連絡してみることになった。

20時ごろ、母親が啓介君の家に電話したが帰っておらず、皆で捜索し、警察にも連絡したが、啓介君は戻ることは無かった。

噂話が広まった、実は、この神社で子供が消えるのは、過去にもあったそうだ。
ただ消える子供は必ず要らない子、つまりその家族が生きて行く上で口減らしのために、体が弱いとか、性格に問題がある子供を間引いた、今で言う人身販売の待ち合わせ場所として使われていたのではないかと、行きの道は二人で手をつなげるけれど、帰りは一人で帰ってこなければならない。

行きはよいよい 帰りはこわいこわいながらも通りゃんせ 通りゃんせ
母親と子が二人で帰れないことを実は歌っているとしたら。

啓介君の家の事情は何か問題があった訳でもないと、これも近所の噂話で聞いた。

これは、日菜子さんが10歳になる前に起きた怖い話。

考察
本当に、神隠しにあったのか、それとも人さらいにあったのか
最悪の想定では、この神社で親が、または頼まれた誰がが子供を殺して隠した、
その殺された子供の怨念によって引き起こされたかもしれない。

人は、自分の都合の悪い事は隠そうとする傾向がある。
真相を探ることによって二度とこのような事が無くなるのかもしれない。

ただ、人は、自分の事でなければ一生我慢ができる、
それに加えてこの地域の風習として、その秘密を明かさないのが掟のようになっていて、明かせば、村八分だと圧力がかかっていたとしたら。
姿を消した子供達は浮かばれることは無く、闇に葬られたままで、このような話はおそらく日本のあちこちに存在すると考えられる。

行方不明者が減らない理由の一つかもしれない。     終

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