カーテンの隙間から見える外の世界は、どんよりと曇っていた。 テレビでは昨日見ていた『エターナル・サンシャイン』のラストシーンが流れていた。 どうやら途中で眠ってしまったらしい。 隣にはか細い寝息をたてながら眠る美月がいた。 白いキャミソールの肩紐が二の腕辺りまで落ちている。 僕は人差し指で肩紐を肩にかけてやった。 指に触れた美月の肌は滑らかで、大理石のようだった。 「えっち」 「何がだよ」 僕の指で起きた美月が、小悪魔のような笑みを浮かべる。 僕が頭を撫で
「大丈夫だよ。次があるって」 私、賀喜遥喜の日課は失恋した親友の遠藤さくらを慰めることだ。 舞台は放課後の図書館。 今日も今日とて、意中の男に告白したが好きな人がいるときっぱり断られてしまった。 「あの男が見る目ないだけだよ」 机に突っ伏してピクリともしないさくらに言葉を投げかけて早五分、そろそろ生きているか不安になってきた。 「さくちゃん?」 ゆっくりと上がったさくらの顔は、涙でボロボロになっていた。 「死ぬ時は一人なんだ…」 「そんなことないよ」 「そ
池田瑛紗は、俗に言う変な人だった。 彼女は他人に興味を持つことはなく、話し方やオーラが限りない陰を感じさせる。 彼女とは、友人でも恋人でもない。 二人の間でしか理解できない不思議な関係だった。 冷たい風が僕の頬に容赦なく吹きつける。 * 僕たちの出会いは、ロマンチック要素が抜けた運命のようだった。 老夫婦が経営している古びた映画館。 週末に『フォレスト・ガンプ』を見るのが僕のルーティーンと化していた。 下町のレイトショーということもあって、基本的に客は僕一人