【書評】伝説のトレーダー集団タートル流投資の魔術
書籍情報
書名:伝説のトレーダー集団タートル流投資の魔術
著者:カーティス・フェイス
監修:飯尾博信 常盤洋二
訳者:楡井紘一
出版社:徳間書店
出版年:2007年
概要
本書は1980年代に有名になった先物トレーダー集団タートルズの1人がその投資手法について明らかにしたもの。根底となる考えは以下のタートルズの教えで、それをどのようにして実践していくかが示されている。
タートルズの教え
エッジ(優位性)のある取引をせよ
正の期待値を持つトレーディング戦略、すなわち、長期で見てプラスのリターンを生むトレーディング戦略を見つけること。リスクを管理せよ
取引を継続できるよう、リスク管理すること。でなければ、正の期待値を持つシステムから利益を得られない。首尾一貫せよ
計画は、首尾一貫して遂行すること。そうすれば製の期待値を達成できる。シンプルであれ
シンプルなシステムは、複雑なシステムよりも長期にわたって持ちこたえる。
総評
私は商品先物もテクニカル分析に基づいた売買も行わない。私の投資スタイルに影響を与えてきたのは学術的なアプローチをとる経済学者やグレアムやバフェットに代表されるバリュー投資家で、本書の様なテクニカル分析に基づいたアプローチはなぜそうなるのか?再現性はあるのか?の2点で理にかなっているとは思っていない。この点については読後も意見は変わらない。
しかし、リスク管理の手法は具体的に記載された手法はそのままでも利用可能だし、自分の投資手法と市場環境がマッチしているかを確認するタートル流積み木などは考え方として有益だと思う。特にリスク管理はバリュー投資家もインデックス投資家も長期的視点に立ち短期の価格変動を重視しないため「リスク許容度範囲内で投資せよ」というだけで済ましてしまいがちなので、本書で示されている具体的な方法は異なる投資手法をとる者にとっても役に立つだろう。
本書で述べられているリスク管理の論点には以下のようなものがある。
1.ポジションサイズはどの程度まで許容できるか?
2.1つの投資対象に全予算の内どの程度まで投じてよいのか?
3.類似性の高い投資対象に投資する場合はその程度に変化はあるのか?
4.利確・損切の基準は?
など、どれも現実的に対応が必要な論点ばかりで、投資スタイルの違いを超えて参考になった。
併せて読むと面白い本
本書では確率的・統計的にものを見る視点が強調されている。初等的な統計学を学んでおくことはその基礎を築いてくれるので学んでおいて損はない。
教科書を読むのはしんどいので。