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#0033 人事の全景-採用・労務・人材マネジメント・組織開発・目標管理のホロン構造-


人事の地図が欲しい

おつかれさまです。坪谷です。

「人事」って・・・どこからどこまでのこと?

25年前、エンジニアから人事担当者に転身した私は、混乱していました。人事のを学ぼうと思ったのですが、調べれば調べるほど、その領域は広く深いのです。

いろんな本や記事を読みました。

専門書は、残念ながら初心者の私には難しすぎて理解できませんでした。
企業ごとの事例は、成功したいい話ばかりで自社には使えないように思いました。
労政時報やWorksという定期的に発行されている情報誌は、部分的に勉強になりました!しかし全体像は見えませんでした。

わからないなりに人事担当者、そして人事マネジャーとして経験を積み、それなりに仕事をこなせるようになりましたが、どうにも不安です。

「ちゃんと人事がわかっている」という自信がもてなかったのです。

体系的に人事の領域を示した「地図」が欲しいなあ・・・

ずっとそう思っていました。

それから私はリクルートマネジメントソリューションズ社に転職し、人事コンサルタントになりました。師匠たちやクライアントの人事責任者・経営者に鍛えられながら50社以上の人事制度を構築し、組織開発を支援してきました。

自分なりに多くのことがわかりました。そして思ったのです。

この知識を、人事になりたてで困っていた時の私に、そして私と同じように困っている人事の初学者の方に届けよう。

人事コンサルとしての経験から得た持論をもとに、人事担当者が知っておくべき知識の体系、つまり「人事の地図」を書くことにしたのです。

そして2020年に完成したのが書籍『図解 人材マネジメント入門』でした。

坪谷邦生『図解 人材マネジメント入門』

この地図は、嬉しいことに人事の初学者のみならず、ベテラン人事、経営者、マネジャーに使っていただいています(12刷 2025年現在)。

そしてこの内容をもとにセミナーや読書会を数多く行い、読者の皆さんと接する中で、組織開発の領域を深く掘り下げる必要を感じて『図解 組織開発入門』を執筆し、個と組織がともに勝つための一番のポイントは目標管理にあると感じて『図解 目標管理入門』を執筆し、人材マネジメントの前に労務領域が土台として重要だと気づいて『図解 労務入門』を執筆しました(シリーズで9万部 2025年現在)。

その結果、私の捉えた「人事」は、もともと作った「人材マネジメント」の地図から、大きくはみ出していました。

・・・あらためて地図を書き直すべきだと、私は考えました。

人事の全景

これまで考えてきた人事の各機能「目標管理」「組織開発」「人材マネジメント」「労務」を統合して完成したのがこの「人事の全景」です。

人事の全景

この年輪のような「超えて含む」階層構造は、ホロン構造と呼ばれています。

ホロン構造:
・入れ子状(年輪状)の階層構造。上の階層は下の階層を「超えて含む」
・支配のための序列ではない。下の階層が重要で、なければ上の階層は成り立たない
・上の階層ほど複雑性が高く、失われると復活させることが難しい

例)原子<分子<細胞
  文字<単語<文章

(ケン・ウィルバー『インテグラル理論』をもとに坪谷邦生 記述)

目標管理、組織開発、人材マネジメント、労務、採用はそれぞれ重要な人事機能を担っています。

目標管理や組織開発は上層にありますが、そこを担っている人が「偉い」というわけでありません。ただ上層にあればあるほど「複雑性」が高くなるのです(原子よりも分子、分子よりも細胞の方が複雑であるように)。

逆に、下層が機能していなければ上層は機能することができません(原子がなければ分子や細胞が存在できないように)。例えば、労務が機能していない中で人材マネジメントを行なったとしても、労働者の生活と健康や社内秩序が乱れてしまい、人的投資は無駄になることでしょう。また人材マネジメントが機能していない中で組織開発を行なったとしても、組織として合理的に勝つ構造がないため対話ばかりしていて衰退する「ぬるま湯」組織になってしまいます。

最下層にある「採用」はすべての根幹であり、採用がなければすべてが崩れてしまうため、ある意味で一番重要な機能は採用だといえます 。

各機能(ホロン構造)

人事とは「人を生かして事をなす」ことですが、年輪(ホロン構造)の各機能はそれぞれのやり方で「人」と「事」に働きかけます。1つずつ見ていきましょう。

目標管理

もっとも外側に位置する階層は目標管理です。組織開発、人材マネジメント、労務、採用をすべて含んで超えています。
目標管理は、目的・目標によって「」をスパイラルアップする機能です(その方法は『図解 目標管理入門』を参照)。その主体者は「すべての働く人」自身です。マネジャーは直接支援し、人事担当者は間接支援します。

組織開発

次の階層は組織開発です。人材マネジメントと労務、採用を含んで超えています。
組織開発は、自律的にが生まれるよう「と人の間」へ働きかける機能です(その方法は『図解 組織開発入門』を参照)。その主体者は、組織をよくしたいと考えて動いているすべての人(実践者)です。人事の組織開発担当者が支援します。

人材マネジメント

次の階層は人材マネジメントです。労務と採用を超えて含みます。
人材マネジメントは、「の才能」に投資して中長期でを最大化する機能です(その方法は『図解 人材マネジメト入門』を参照)。その主体者は直接マネジメントをしているマネジャー(管理職)です。人事担当者はその支援を行います。

労務

次の階層は労務です。採用を超えて含みます。
労務は、「労働者(をなす)」の生活と秩序を守る機能です(その方法は『図解 労務入門』を参照)。その主体者は使用者である経営者です。人事の労務担当者は支援する役割です。

採用

最後の階層は採用です。人事の中心であり根幹となります。採用ができなければ人事は始まりません。
採用は、「をなす」を採る機能です。主体者は経営者や部門責任者です。人事の採用担当者はその支援を行います。

この「人事の全景」を考えていく中で、根幹である採用について書けていないことに気がついたため、現在その方法を『図解 採用入門』として執筆中です!2025年の発売予定ですので、ご期待ください。そして執筆にあたり、10人の見識者と対談を行っています。その様子は『図解 採用入門 「理論と実践」100のツボ』対談 にて連載していますので、ぜひご覧下さい。

また、この一連の「人事の全景」を一冊に束ねた、やや分厚い書籍を、現在構想しています。私なりの「人事の学びの集大成」になる予定です。皆さんの机の上にお届けできる日を夢見てコツコツと進めております。こちらはやや気長にお待ちいただけると嬉しいです。

私のお伝えしたいことは以上です。

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