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<本と映画の答え合わせ(第6~10回)>「ザリガニの鳴くところ」、「エデンの東」、「オリバーツイスト」、「老人と海」、「オリエント急行殺人事件」



(第6回)ザリガニの鳴くところ

【本】
〇タイトル:ザリガニの鳴くところ
〇作者:ディーリア・オーエンズ
〇感想:
 ・600ページを超えるが展開が気になり、時間があれば読みたくなる。ページをめくる手が止まらない
 ・2つの時代(シーン)を混ぜて話が進む。複雑になりすぎず読みやすい
 ・読んでいる途中で真相が気になり、先に結末に目を通さないようにするかなりの努力が必要
 ・法廷の場面では検察、弁護士の攻防そして陪審員の心情、心理の変化が読み取れ秀逸。いつの間にか自分も陪審員の1人になったかのように読み進めていた
 ・カイヤ=自然、作者のメッセージが伝わる作品
 ・結末は意外であったが、ところどころに読者が結末に対して納得感を得るプロットが仕組まれていたことを読了後にあらためて感じた
〇評価:◎

【映画】
〇ザリガニの鳴くところ(2022年)
〇監督、主演:オリビア・ニューマン監督、デイジー・エドガー=ジョーンズ
〇感想:
 ・映画を作成するに当たっては決められた時間内に原作通りいかに再現するかが重要という点に初めて気づいた。その点では法廷のシーンからスタートし、過去を振り返る形で話が進み、よく練られた構成である
 ・カイヤの家が想像よりも綺麗
 ・共感したテイラー・スウィフトがエンディングソングを提供
〇評価:◎

【総合】
〇感想:
 ・ザリガニは英語で”clay fish”と覚えていたが"crawdads"でもあることを初めて知った
 ・本(原作)を読んでいるからこそ映画で描かれているシーンについて、この文章を再現していると理解できる。やはり映画を見るだけでは理解が不十分になると感じる。
 ・本を読み、映画化されているのであればそれも鑑賞することで作品に対する理解、解釈を今後も進めたい、楽しみたいとあらためて感じた
 ・本で想像を膨らませ、映画で落とし込む。具現化されることで自分の描いていた世界とのギャップ等を知ることができるので「本と映画の答え合わせ」は時間がかかるが面白い。
 ・本、映画ともにコロナ5類移行後1番すばらしいと思った作品
 ・自分にとってこの作品を一言で表すと「本能」

(第7回)エデンの東

【本】
〇タイトル:エデンの東
〇作者:ジョン・スタインベック
〇感想:
 ・カインとアベルがモチーフであるが自分はキリスト教徒でもないことからピンとこない。一方、同じ東洋人であるリーが偏見にもかかわらず重要な役割を果たしていることが印象に残る
 ・スタインベックの素朴であり力強い文体によってアメリカ西部の自然の過酷さが伝わる
〇評価:○

【映画】
〇エデンの東(1955年)
〇監督、主演:エリア・カザン監督、ジェームス・ディーン
〇感想:
 ・キャルをジェームズ・ディーンが演じ、本(原作)の一部分を映画化。原作が3世代に亘る非常に長いストーリーであるため、このように当時1番勢いのある俳優を起用し、名作の1部分に焦点を当てて映画化したことに異論はない
 ・原作で見られた宗教的要素は感じられない
 ・若くして亡くなったジェームズ・ディーンを映像で観ることができる貴重な作品
〇評価:△

【総合】
〇感想:
 ・スタインベックの「怒りの葡萄」に触発されて本作品にも触れたが、長編大作であるものの印象は薄い
 ・そもそも自分が聖書に詳しくないため登場人物の誰が何を表し、意味するのか全く考えが及ばないからであろう

(第8回)オリバーツイスト

【本】
〇タイトル:オリバーツイスト
〇作者:チャールズ・ディケンズ
〇感想:
 ・ディケンズの作品は起承転結がしっかりと構成されており、勧善懲悪が根底にある。このため、分かりやすく、読みやすい
 ・一方で本作品は登場人物の関係が複雑で理解できない
 ・フェイギンの描かれ方、設定から当時のユダヤ人の置かれていた立場が窺い知れる。キリスト教徒とユダヤ教徒、今日のガザの問題も宗教的背景を知ると知らないとでは捉え方が違うものになるのであろう
〇評価:○

【映画等】
〇オリバーツイスト(2007年)
〇監督、主演等:イギリスのテレビドラマ(BCC版)
〇感想:
 ・本(原作)を忠実に再現している。当時のロンドンの状況、人々の服装、慣習等が伝わり興味深い
 ・フェイギンが本(原作)に比べて好人物に描かれている。当時のキリスト教とユダヤ教の対立を知るとともに、改宗を断り極刑になるフェイギンが1番印象に残った
〇評価:○

【総合】
〇感想:
 ・善人と悪人が明確に区別できる
 ・登場人物の関係が分からない。ネットで関係図を調べて初めて理解できた
 ・本を読んで映画を観ても登場人物の関係がつかめなかった。結末はハッピーエンドなので深いことは考えずに、本、映画それぞれを楽しむのがよい

(第9回)老人と海

【本】
〇タイトル:老人と海
〇作者:アーネスト・ヘミングウェイ
〇感想:
 ・2回目の読了。前回30年ほど前に初めて読んだときと比べ受け止め方は殆ど変わらない
 ・一方でアメリカ、キューバの地理、メジャーリーグの選手等に詳しくなったことからジョー・ディマジオが誰なのか、舟がどのあたりを漂っているのか見当がついた
 ・個別には老人の誇りと不屈の闘志とカジキに対する敬意、サメの襲来が意味する不条理そして無慈悲、少年の老人に対する尊敬等、また、全体を通して忍耐、勇気、希望等分かりやすく読者に伝わる
 ・ゆえにあらゆる世代で楽しめる不朽の名作であろう
 ・ヘミングウェイの文体は言い回し、比喩が少なくストレート
〇評価:○

【映画】
〇The Old Man and the Sea(1958年)
〇監督、主演:ジョン・スタージェス監督、スペンサー・トレイシー
〇感想:
 ・本(原作)はあまりにも有名で1度は読んだことがある人も多いと思うが、映画を観た人は少ないのではなかろうか。
 ・良い意味で自分の想像を裏切った。舟は大人が2人乗れる程度と小さく、オールと帆で進み、公園の池のボートを一回り大きくした程度。勝手に小型エンジンくらい積んでいるものと決めつけていたが、老人は救命用具も身に着けておらず、これでは巨大カジキと戦えない。
 ・カジキを舟に横付けし港へ引き上げるシーンではその大きさを実感できる
 ・バックミュージックがオーケストラの演奏の如く、カジキとの格闘やサメの襲来ではその迫力を、また終盤の哀愁漂うシーンを盛り上げる
〇評価:◎

【総合】
〇感想:
 ・本の魅力の1つは自分の想像を膨らませることができることであるが、今回のように映画が自分のイメージよりも過酷な状況で描かれている場合、感動が一層深まることを知った
 ・主人公は若者ではなく人生の終盤に差し掛かり優しさが表に出てくる一方で誇り、闘志を失っていないサンチャゴ、そしてカジキ、サメ、トビウオ、鳥等すべてを含めて海、タイトル「老人と海」について理解が深まった
 ・カジキの大きさと鋭い吻、次から次に襲ってくるサメなど可視化されることで迫力が増し、印象が変わるので本を読むだけではなく映画も観ることをお勧めする
  ・第4回で取り上げた「白鯨との闘い」のように最新の技術で映画を撮り直してほしい。なお、サンチャゴを同じく老齢期に差し掛かった大俳優トム・ハンクスが演じればほぼ一人芝居となることも含め彼の集大成となるのではないか

(第10回)オリエント急行殺人事件

【本】
○タイトル:オリエント急行殺人事件
〇作者:アガサクリスティー
〇感想:
 ・こんな結末があるのか、アガサクリスティーは固定観念を覆し画期的な存在であったと推察
 ・同じ推理、探偵小説でもレイモンド・チャンドラーとは全く異なり、筋書き、理論構成に緻密な計算が感じ取れる(チャンドラーの作品もそれはそれで面白い)
〇評価:△

【映画】
〇オリエント急行殺人事件(2017年)
〇主演:ジョニー・デップ、ペネロペ・クルス
〇感想:
 ・原作を忠実に、決められた時間内に上手に再現できている
 ・先に本を読んでいなければ犯人は全く分からないであろう
〇評価:○

【総合】
〇感想:
 ・話の展開に深い理解が必要とされるわけではなく、そうくるかという想像を超えた結末が魅力であることから映画を観るのみでよい
 ・同様に固定観念を覆した「アクロイド殺し」を映画化してほしい。誰の視点で物語を進めていくのか構成がとても気になる


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