書評 周防柳「身もこがれつつ」
藤原定家のことを書いたフィクションで、
ここ半年以内で読んだものの中では1番面白かったかも!
フィクションと言っても、
史実に裏打ちされたベースがしっかりしているから、カジュアルなBL要素があっても全く薄っぺらくないし、
作者のこのカテゴリへの興味と関心と研究熱心さには、感服する。
私はもともと、短歌や俳句が好きで、
学生時代も百人一首を一生懸命覚えて、
校内のカルタ大会で名人になったこともあるほど。
(懐かしいな…)
短い三十一音の中に、
想像を掻き立てる無限の世界観が広がっていて、
とてもワクワクするのだ。
タイトルの『身もこがれつつ』は、
兵庫県の淡路島が舞台となっている歌の、
最後の七句。
小説内では、藤原定家が家隆を想って読んだ歌という設定で、
定家お得意の【本歌取り】がされており、
本当に古歌をたくさん学び愛していたのだなぁと、感じさせる一句。
【本歌取り】は、簡単に言うと、古い歌の言葉や表現を真似て(取り入れて?)、新しい歌を作ること。
パクリではなく、オマージュだと思っている。
定家が読むと、本歌の方にも興味が湧いてくるから不思議〜。
家隆の、『風そよぐ〜』の歌も、
小説内では素敵な設定で読まれていて、
しかも上賀茂神社のあの川?!行ったことあるんだけど!!
と、更に好きになった。
とにかく爽やか。
水の掛け合い、私もしたいな。
それから、なんといっても、
小倉山荘の四面の襖に、美しい季節の絵と定家選定の和歌が散りばめられている光景は、
なんとも圧巻だったろうなぁ〜と、
想像する気持ちよさ。
平安貴族たちの思いつくことよ!
いとをかし!
私は和歌は好きだけど、
歴史には詳しくないから、
どこまでが確かな史実で、どこら辺が「諸説あり」ゾーンなのか、細かい区別はできないけど、
登場人物の細やかな心情は、間違いなく作者の想像だろう。
だとすると、
本当によくできている。素晴らしい。
歌と心情がとても良くマッチングしていて、
今では(その設定しか考えられない!)くらいの勢いで、
読み人の心情と歌を重ねてしまう。
歌の意味を知るよりも、深く、歌を理解する。
余談。
ところで、
小説を読むときのクセで、
実写化キャストを考えてしまうんだけど、
後鳥羽院の若い頃は韓国アイドルのテギョンがいいな〜と浮かんだの。
読んでいる時はちょうどNetflixの『ヴィンチェンツォ』を観てた時期で、
あのクルクルパーマの髪型と生意気そうなビッグスマイルがイメージにぴったりだった。
当時の髪型では絶対ないんだけどね。
賛成してくれる人いるかな?