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『文芸ピープル 「好き」を仕事にする人々』 辛島デイヴィッド 講談社 2021年 ‎978-4065228289

竹森はイギリス出身だが、文学作品を翻訳する際は、できるだけ「イギリス英語でもアメリカ英語でもない一種の文学的な間大西洋英語(Literary Mid-Atlantic English)」を使うよう心掛けている。

p92

コロナ禍でオフィスが閉鎖される1週間前に、評者などに事前に配るための見本ARC(Advance Reading Copy)が無事グローヴに届いた。ブラックストックはARCを数箱分持ち帰り、イケアの青いバッグに入れて最寄りの郵便局まで運び、評者や(書店が閉店していたので)書店員の自宅に郵送した。印刷作業が中断する前にそのような準備をすることができたのは幸運だったという。多くの出版社がコロナ禍で電子版ARCしか配れないなか、印刷版が手元に届いて喜ぶ書店員も多かった。「村田沙耶香の新刊ということもあったけど、すぐに読んでくれたよ」。

p95

↑コロナ禍でこうした葛藤があったのか!

イギリス滞在中に企画された、2020年に日本からの作品を20編掲載するグランタ誌のプロジェクト(20 for 2020)も、東京オリンピックの延期もあり時期はずれ込んだものの、11月に無事公開された。この企画では、2020年に英訳が刊行された川上未映子、柳美里、松田青子、村田沙耶香の短編の他に、西加奈子、金原ひとみ、原田マハなどの作品もグランタのサイトに掲載された。副編集長のルーク・ネイマは、日本文学の「今」を切りとるこれらの作品は、「今後も雑誌のサイトを通して長く読まれ続けるはず」だという。

p193

2020年は、注目度の高いニューヨーク・タイムズ紙の(Notable)100冊とタイム誌の(Must-read)100冊に、それぞれ日本の女性作家の作品が4冊含まれた。

p200-201

ここ5年ほどの間、日本の「新たな」書き手たちの作品を世に送りだしてきた翻訳家たちのなかには、スケジュールが1、2年先まで埋まっているという人も少なくない。また、訳者には、それぞれの好みやこだわりがある。より多様な作品が翻訳される環境をつくるためには、次世代の訳者に間口を広げていく必要があるだろう。そのための機会として、日本の文化庁が主催し、継続的に実施されている「翻訳コンクール」の存在は貴重だ。同時に、イギリスではしばらく中断していた、英国文芸翻訳センター(BCLT)の日本語翻訳ワークショップが再開されることも朗報だ。過去の参加者が今度は指導する立場に立つ。2021年のワークショップの指導役をつとめるのはポリー・バートンで、「[コロナ禍への対応として]オンラインで行われることにより参加者の層が広がることを期待している」という。

p206-207

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