カズベキ近くの絶景グヴェレティの滝目指して岩登り!トルストイの山岳体験を追体験
朝目を覚ましておもむろに外を眺めてみると、朝陽がカズベキ山を照らしていた。下界の夜の世界とのコントラストに感動してしまった。
この日はまず軍用道路をさらに北上し、山中にあるグヴェレティの滝を目指す。
その道中はまさにカフカース。かつては馬車一台通ることも困難な危険な道だったそう。そんな時代にトルストイやプーシキン、レールモントフら偉大な文学者たちはここを歩いていたのである。
さて、滝付近の山に間もなく到着。例のごとく山道は舗装されていないためここも激しく揺れた。
車から降りてここからはガイドと共に登山の開始である。
歩き始めてすぐに不安になる。
本当にこんな気楽に歩き始めて大丈夫な場所なのだろうかと。見てほしい、この目の前の山を。これから一体私はどこに向かおうというのか。
振り返ればすでにTHE 山である。とんでもないところに来てしまった。
どうやらこの正面の奥の方に滝があるらしい。道自体は今のところ危険を感じることはない。愉快な軽登山くらいの気分だ。このままそれが続くことを祈る。
おぉ、山らしくなってきた。そして川が流れている。きっと例の滝から流れているものだろう。
この辺から川沿いということもあってごろごろした大きな石の上を歩き始めることになる。油断するとケガをしかねない。
なかなかに流れが激しい。だが、ガイドによればこれでも水は少ないそう。春の雪解け時期はもっとすごいことになっているそうだ。
川から少し離れて木々の間を抜けると、視線の先に滝が現れた。崖の上から細い流れがすっと流れ落ちている。これは美しい。ぜひもっと近くで拝みたいものだ。
だが、滝への道はここからが本番だった。もはや完全に岩登りである。これはきつい。もはやお気楽なハイキングの気分はどこへやら。アルメニアで倒れた私にとってこれはかなりの関門である。
ゆっくりと用心しながら少しずつ登っていく。あと少しだ。
休み休み振り返ると文句なしの絶景である。カフカースはどこに行っても絶景だ。
いよいよ到着。こちらが名高いグヴェレティの滝である。
苦労して登って来た分、感動もひとしおだ。
崖の上からいきなり水が噴き出してきたかのようだ。ところどころ岩壁にぶつかり微妙に角度を変えて落ちてくる水の流れが何とも美しい。まるで糸が絡み合い、編み込まれているかのようだ。
私たちはこの滝の前でしばらく時を過ごした。
霧状になった水を顔に受けながらぼーっとこの滝を眺めるのは何とも心地がよかった。
そして水が落ちていく様を上から下まで追い続ける。これがまた楽しいことこの上ない。水の動きに目が釘付けだった。
そしてふと視線を上げて崖の上を見てみた時、私はそこに山の民がいるように感じてしまった。崖の上から私たちを見下ろすかのような男たち。そんなイメージがふと私の中に浮かんできたのだ。
このカフカースの山の中を歩いて、私はその雄大さに打たれた。そしてここにかつて住んでいた山の民たちへの敬意が自然に浮かんできた。こんな過酷な環境で生きていた人がいたのだと。
トルストイはまさにこうした山の民に敬意を持っていた。そしてロシアの方こそ彼らを意味もなく攻撃していると考えた。これはやはりものすごいことだと思う。普通のロシア人はそんなこと考えもしなかった。ここにトルストイの偉大さがあるのではないか。そんなことをこの滝を見ながら考えていたのである。
帰り道も絶景を楽しみながらの下山である。岩山を下りるときはかなり緊張感があったが無事帰還することができた。
この記事は以前当ブログで公開した以下の記事を再構成したものになります。
この記事ではグヴェレティの滝に加えてダリアリ渓谷についてもご紹介しています。ぜひこちらの元記事もご参照ください。
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