モネの『印象・日の出』は立体⁉パリで私の1番好きな絵画!パリのマルモッタン・モネ美術館を訪ねて
マルモッタン・モネ美術館はパリの西側にあり、ブローニュの森のすぐ近くだ。以前紹介したバルザックの家とも近い。
中は豪華な邸宅のような雰囲気で、その壁面に印象派の絵画や多数の名画が飾られている。私はモネの『印象・日の出』を目当てに来ていたのでこちらに時間を割くことができなかったが、ここにも印象派を代表する名画の数々が展示されているので見どころはたくさんあると思う。
そして階段を下りていくとあの『印象・日の出』が私の目の前に飛び込んできた。「おぉ・・・!」と思わず声が漏れてしまった。いよいよあの絵と対面できるのだ。
想像していたよりも小さめのサイズだ。もう少し近くに寄ってみよう。
う~ん、素晴らしい・・・!実物は想像以上だ!
パッと見ればぼや~っとした何気ない絵に見えるかもしれない。だが違うのだ。ひとつひとつの筆のタッチが恐るべき意図を持って描かれているのが近くで観るとよくわかる。
水面に反射したオレンジの光線は近くで観るとこのように描かれていた。適当にちょんちょんちょんと線を描いているだけのように見えるかもしれない。だが少し離れて観てみるとこの線がぼやけて周囲と完全に溶け込み、グラデーションを形成する。しかも絵の具の厚みによっても見え方が異なることをモネは計算しているのではないか。写真で見ると絵は平面だが、オリジナルは立体なのだ。
このように斜めから間近で観てみるとその立体具合が特にわかる。写真ではなかなか伝わらないと思うので、オリジナルを観た時はぜひ試してみてほしい。
そしてこの美術館がさすがだなと思ったのは、この椅子の位置だ。私は様々な距離、角度からこの絵をしばらく見続けていたのだが、この椅子の位置が最も美しく見える距離なのではないかと思う。
先ほども見たように、モネのタッチが絶妙にぼやけて周囲と溶け込むその距離感。それがここだ。
『印象・日の出』には輪郭線がない。
だが、人間の視覚もまさにそのように見えているのではないだろうか。明確な線ではなく、全体としての印象を私たちは脳で統合し、世界を見ている。
視覚は光の受容によって起きる。ではその光を人間はどのように受け取っているのか。そもそも、目の前に映る世界とは何なのか。
私はかつて、こうした探究をオランダの画家フェルメールを通して知ることとなった。
フェルメールは科学者のごとく光の作用を研究し、それを絵画に落とし込んだ。彼の作品はまさに光の芸術と呼ぶにふさわしい。
そんな彼の絵画を学んだことが思わぬところでこの『印象・日の出』と繋がった。
モネはフェルメールから200年以上後の人物であるが、光の探究という面では共通するものがあるのではないだろうか。
改めて絵の細部を見ていくと、この空や海も筆の流れが非常によく見える。この流れがあるからこそ一定の距離から見た時に絶妙な効果を上げるのだ。
クロード・モネといえば『睡蓮』や『パラソルをさす女』、『ラ・ジャポネーズ』など数々の有名な絵画があるが、私はやはりこの『印象・日の出』が一番好きだ。
この絵は本当に不思議だ。全体がぼんやりしているものの、それが心地よい。夕陽とその光の反射の描写はまさに天下一品だと思う。なぜか引き込まれる不思議な魅力がこの絵にはある。これ以上はうまく言葉にできない。
私がパリで最も好きになった絵画は間違いなくこの作品だ。
ありがたいことにこの美術館はルーブルやオルセーと違ってそれほど混雑はしない。だからゆっくりと心行くまで好きな作品に没頭できる。ぜひこの美術館もおすすめしたい。そして『印象・日の出』をじっくりと堪能していた頂ければ何よりだ。
この記事は以前当ブログで公開した以下の記事を再構成したものになります。
この元記事では私がモネの『印象・日の出』に興味を持つようになったきっかけや、フランスの文豪エミール・ゾラと印象派の関係についてもお話ししてます。興味のある方はぜひこちらもご覧ください。
以上、「モネの『印象・日の出』は立体⁉パリで私の1番好きな絵画!パリのマルモッタン・モネ美術館を訪ねて」でした。
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