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小説で何を読むか迷っているならチェーホフとゾラをぜひ!迷っていなくてもぜひぜひ!

私はこれまでドストエフスキーのことについてブログを更新し続けてきました。そんな私がこれを言っては元も子もないのですが、私は「ドストエフスキーは万人におすすめできる作家ではない」と最近感じるようになってきました。

ドストエフスキーは私の最も好きな作家の一人です。それは今でも疑いようがありません。

しかしこのお方を多くの人に「ぜひ読んで下さい」とは薦め難いというのが正直なところなのです。

ドストエフスキーは良くも悪くも狂気の作家です。そして彼の文体はまるで黒魔術のように私たちを彼の絶大な影響力の下に置いてしまいます。

疲れている時や精神的に落ち込んでいる時は特におすすめしません。おそらく、呑み込まれます。精神的に病んでしまってもおかしくありません。これは冗談でもなく私の本音です。私自身、ドストエフスキーに影響を受け体調を崩し、精神的にも不安定になってしまった時期がありました。(ある意味これがドストエフスキーの醍醐味なのかもしれませんが・・・)

ドストエフスキーは人間の奥底のどろどろした混沌を凝視し続けます。どこまでも登場人物の心の奥底に彼は入り込みます。彼のすごいところはそれを読者の私たちにも体験させてしまうところにあります。それを可能にするのが黒魔術的なあの独特な語り口なのです。

ドストエフスキーは社会とのかかわりにおける人間というよりも、人間一人一人に潜む人間の根源に迫っていきました。

それに対しチェーホフは社会の中に生きる人間の心を見つめました。ある環境における人間同士のかかわりの中で一人一人の心を覗いていきます。単なる個の問題というより集団における人間の個が問題にされています。

また、ゾラは社会の仕組みそのものを分析し、そこから人間の心理を研究していきました。

彼らは三者三様でものの見方や観る対象が全く異なるのです。

今の余裕のない世相の中であえて自分自身すら狂気に落ち込みかねないドストエフスキー作品は正直あまりお薦めできません。それでも読んでみたいという覚悟があればぜひ読んだ方がいいです。ものすごくいい読書体験ができるでしょう。やはりドストエフスキーは文学の最高峰であることは疑いようがありません。

ですが、ただ何となく読んでみようかなというのはなかなかリスキーですし、そもそも娯楽小説として気楽に読める本ではないので読むのがつらくなってくると思います。無理して読んでドストエフスキーを誤解し嫌いになってしまうのはもったいないかなと思います。

敷居を高くしてしまったようで申し訳ない気もしてしまうのですが、敷居が高いというのは一概に悪いことではありません。むしろ無理やり敷居を下げて本来の素晴らしさが伝わりきらずに「こんなものか」と誤解される方が悲しい結末なように私は感じます。ドストエフスキーはものすごい作家です。ですが万人にお薦めできる作家ではないというのはそういう意味なのです。

さて、閑話休題。

ドストエフスキーについてお話ししましたが、それに対しチェーホフはまず作品が短いのでとにかく読みやすいです。短いものは数十ページ、長くでも百ページほどです。しかも文体もすっきりして読みやすく現代の小説とまったく変わりません。とにかく読みやすく、わかりやすいです。現代小説と比べても全く負けない、いやそれ以上に面白い作品が目白押しです。

ゾラも多少作品自体は長くなりますが、文体も読みやすくまるで映画を観ているかのように物語が目の前に現れてきます。びっくりするほど読みやすいのでぜひこれは体験して頂きたいほどです。

チェーホフとゾラは間違いなく今の時代に合った作家です。この閉塞し、何が正しくて何が間違いなのかもわからない不確かな時代に改めて光を投げかける作家です。

私たちは何をすべきなのか、何を思えばいいのか。

そしてこの社会の仕組みはそもそもどうなっているのか。どのようにして出来上がり、今なお私たちを動かしているのか。

今やネットや本で大量の情報が出回っていますが、ぜひチェーホフとゾラを手に取って頂きたいなと思います。その面白さもさることながら、社会の仕組みを知るという点でもこの両者の作品は素晴らしいものがあると思います。

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今回の記事は以前公開した記事の抜粋になります。より詳しくはこちらの記事をご覧ください。

チェーホフとゾラの文学の特徴やおすすめ作品などもこの記事ではお話ししています。

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