九月の読書記録+布教
◯前書き
私は、自分で言うのもあれですが結構な読書家だと自認しています。月に最低20冊は読んでいます。月30冊を超えるときもあります。そんな暇人(学生の特権)を活かして、軽く色々な本を紹介できたらいいなと思います。読了記事を書けるほどではないけど、いいなと思う本は結構あるので。
とてもよかった小説
◯秋季限定栗きんとん事件上下 米澤穂信
・読了日時→2024年9月30日
・評価→5/5
文句なしで面白い。
それは確定事項です。
米澤穂信さんの「万願」や「儚い羊たちの祝宴」や「古典部シリーズ」あたりししか読んでいないなら、とにかく春季限定から読んでみてほしい。正直、私は「古典部シリーズ」より青春小説として面白いと思っている。
小市民シリーズ自体は、そのシリーズ名とおりで、W主人公の小鳩と小佐内が、自分たちは普通ではないという多少の事実と、自意識過剰と、それなりの痛々しさの元で、集団から孤立しないようにするために、小市民を目指すという話だ。でも、主人公の二人は事件に巻き込まれて、ウキウキと自分の特性を発揮して、ついつい小市民からはみ出てしまう。そういう主人公たちが矛盾をしていく様子を楽しむ小説だ。
秋季限定自体は、瓜野という新キャラのおかげで、小市民シリーズの中で一番面白い話になったと思う。瓜野のおかげで、二人の主人公の特性という属性の意味が、わかりやすく浮かび上がってきいて、説得力が増していて小説としていい構成をしている。
瓜野は、結構浅はかで傲慢でちょっぴり嫌なやつだけど、そんな彼に注目しながら、この小説を読んでみてほしい。
◯元年春之祭 陸秋槎
・読了日時→2024年9月24日
・評価→4/5
「元年春之祭」は、本格ミステリー×百合というあまり作品数の多くないジャンルの小説だ(「儚い羊たちの祝宴」も個人的にはこのジャンルに入れてもいいと思う)。
内容自体は、前漢時代の裕福な家のお嬢様の於陵葵が、観家というかつて国の儀礼を司った名家に、見識を深めるために滞在しているところに、その観家の当主の妹が殺害されるという事件が起こり、於陵葵が探偵役となって事件解決に乗り出すといった話だ。
ミステリーという面では、観家内部の、儀礼に関わる宗教的な解釈を巡っての内部争いが事件の根本にあり、そういう宗教的などろっとした内輪揉めが、私の好みと合致していて高評価だ。
そして、小説としての構成がよく、作者自身が作者として読者への挑戦というものを二回も書いていて、推理をあまりしないで読む私にとっては、いい起爆剤となって久しぶりに推理をしてみた(犯人はわかったけど、動機はまったくわからなかった)。そして、二度目の挑戦以降の展開もとてもよく、二転三転もする激しい推理合戦が繰り広げられ、その激しさと迫力は陸氏の得意技である。
百合という面では、まず探偵役の於陵葵と、語り手であり助手役の観露申の掛け合いがすごく良く、頭もよく知識もある陵葵と、あまり頭は良くないけど勝ち気な露申のケンカップル感がとてもよく、それが終盤の推理合戦をより良いものにしている。
それに、カップリングはこの二人だけではなく、他にも姉妹百合や主従百合など、すごく重たい感情が登場人物たちの間を駆け巡っていいて、濃厚な百合世界を楽しむことができる。
もとが漢文で、漢詩や漢文の書き下し文が結構出てくるが、だからといって格別に読みにくいわけでは無い。序盤さえ乗り越えれば割とスラスラ読めると思う。
そして、「元年春之祭」は陸氏のデビュー作で、荒削りの部分もあるけど、すごく面白いから、ミステリーファンと百合ファンどちらにも読んでみてほしいと思う。
◯九月に読了した本の一覧
・小市民シリーズ夏季限定、秋季限定上下 米澤穂信
・坂の上の雲三 司馬遼太郎
・北近江合戦心得一~四 井原忠政
・星月夜 李琴峰
・惜別 太宰治
・返らぬ日 吉屋信子
・悲しみよこんにちは サガン
・性悪天才幼馴染との勝負に負けて初体験を全部奪われる話三 犬甘あんず
・好きな子の妹 犬甘あんず
・人妻教師が教え子の女子高生にドはまりする話 入間人間
・ミモザの告白一 八目迷
・放課後の教室に、恋はつもる 日々綴郎
・穂高の月 井上靖
・若い読者のための文学史 ジョン・サザーランド
・もしも詩があったら アーサー・ビナード
・女子ミステリーマストリード100 大矢博子
・小説を書く猫 中山可穂
計23冊
◯ps
九月は、かなりの数の百合ラノベが出た。めちゃくちゃうれしい。知ってる限りだと五タイトルも出ている。それなのに、十月は週クラの五巻、十一月には、あだしまの本編とSSの二巻同時刊行。ああ、うれしいし幸せすぎて溺れそう。