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[詩]夜永と冷たい海。

◯夜永と冷たい海。
息を吸って吐く。
波みたいに。
陽が落ちるのが早くなった。
海辺は閑散としている。
手を繋いだまま、夕景に照らされる。
魔女と言われた者が二人。
別の世界へ旅立とうとしている。
長い夜と冷たい海に身を浸す。

世界は闇に満たされる。
星月夜の明るさは、これからゆく旅の道標。
波が青白く光る。
持ってるものは何も無い。
でも、貴女がいる。
それだけで何も怖くないと互いに思う。
2つの手首に縄を沿わせる。
これでずっといっしょ。

冷たい水が二人の足を濡らす。
最後に接吻を交わす。
頬の朱色と唇の温度を胸にしまう。
この世界に安住の地はない。
だから旅という逃避をする。
さよなら、私達に優しなかった世界。
抱き合って冷たい海に沈む。
夜永を旅する。

翌朝、2つの遺体が見つかった。
埋葬はされなかった。
する必要性はない。
なぜなら、2つの魂はこの世界にもうないのだから。



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