絶望の淵にいる人への対応は人生経験が教えてくれた。
父は陽気な磨き職人だった。
そんな父の顔から、ある日笑顔が消えていった。
余命6カ月。
手術という選択肢は、もはやなかった。
あの時、父になんて声をかければいいのか分からなかった。
いつもふざけたことを言っていた父が無口になった。
いつも陽気に笑っていた父が愚痴を言うようになった。
何を言っても聞く耳を持ち合わせていない感じだった。
なんとか会話の糸口を見つけようとしたが、
お互いに言葉が続かない。
励ましてみたりしたが、その言葉は無力のように感じた。
亡くなってもう20年。
最近になってようやく、どうすれば良かったのか分かった気がする。
言葉なんて要らなかったんだ。
ただ、そばにいるだけでよかったんだ。
あの時は照れ臭かったからできなかったけど
手を握ってあげればよかった。
ハグしてあげればよかった。
絶望の淵にいる人への対応は人生経験が教えてくれた。
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