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R3刑事訴訟法を出題趣旨と採点実感で分析する

設問1

総論

設問1は、『刑事訴訟法の規定する差押えの要件に関する法的問題の理解と具体的事案への適用能力を試すもの』である。
差押えは、前提として、『犯罪の捜査をするについて必要があるとき』でなければならない。そして、これを前提に『裁判官の発する令状により,証拠物又は没収すべき物と思料するものを差し押さえることができる』。そして、『差押えできる物は,令状に明示された「差し押さえるべき物」に該当するものに限られる』。具体的には、『①令状に明記された物件に当てはまり(憲法第35条,刑事訴訟法第219条第1項) ,かつ,②被疑事実との関連性を有すること(憲法第35条,刑事訴訟法第222条第1項,第99条第1項)』である。
整理すると、差押えが適法か否かは、①令状があること②必要性があること③差し押さえたものが令状に明示されたものであること④被疑事実との関連性があること、という要件を満たしているかを論証すればいい。
私は、まず、軽く差押えの必要性があることを書く。もっとも、本問では問題になっていないが、場合によっては比較衡量を行う必要があるだろう。この場合は、必要性が認められるか、という要件は最後に書くつもりである。
次に、上記であげた差押対象物の要件を導出・論証する。
そして、当てはめる、といった具合である。

差押①

ここでの1番の論点は、『被疑事実との関連性が認められる証拠の範囲』である。つまりいかなる関連性があれば足りるのか、という点。出題趣旨は、『被疑事実それ自体を立証する価値』がなければならない、という説に加え、『情状事実や背景事情に関する物も被疑事実との関連性が認められる証拠に含めるべき』という説が紹介されている。個人的には、後者の説を取ることで、より多くの事実を引用でき、点を稼ぎやすいと考えている。
採点実感は、このいずれの説を取るかについて論証を求めているが、基本書数冊や百選を読んでも特に書いていないためかける学生は少ないと考えた。
これを前提に、『本件住居侵入強盗の事案の性質,差し押さえられた名刺の記載内容,捜索・差押えの現場がどのような場所であるかなど』を評価して、関連性の有無を論証すれば足りる。司法試験ではなんか関わりがあるだろう、という感覚をきちんと言葉にして表すことが重要だと思う。

差押②

端的に言えば、電磁的記録は人の目で直ちに内容がわからないので、関連性が判断できないというもの。採点実感はこれを踏まえ、論証の流れとして、『捜索・差押えの現場で判断するのが原則であることや,本事例では,捜索・差押えの現場におけるその判断が困難であったこと』に触れる必要があるとしている。
電磁的記録の関連性を判断する方法としては、『罪の内容や現場の状況等に照らして当該電磁的記録媒体に関連する情報が記録されていると疑うに足りる合理的な理由があれば,被疑事実との関連性が認められ,差押えが許されるとする考え方』や『差し押さえるべき物とそうでない物の選別が容易でなく,かつ罪証隠滅の高度の蓋然性がある場合には,被疑事実との関連性の確認のために,刑事訴訟法第222条第1項,第111条第1項の「必要な処分」として,占有を取得した上,事後に選別を行うことも許容されるとする考え方』を紹介している。大きく見れば、差押えの関連性判断の緩和という方法と必要な処分として行う方法と言える。
電磁的記録の判例が、関連性判断の緩和という方向性を示しているように読めたので、個人的には前者をお勧めしたい。
緩和の場合、学説にせよ、判例にせよ重要なのは、関連する蓋然性が周囲から認定できることだと思う。採点実感も『「被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性」に言及』することを求めている。その上で、いかなる場合に許すかは、現場判断をした上で基準を立てるべきである。

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