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司法試験 憲法で守りの答案を書く
はじめに
私は、令和5年予備試験憲法でC。令和6年司法試験憲法で、Aの答案をとった者です。
憲法の答案はある程度システマチックにやることで限りなく守れると思ったのでこの記事を書くことにしました。
ただし、一応勉強に取りかかったものの、型を守れないという受験生を対象としたものであるため、保障範囲→制約→基準定立→当てはめ という流れは理解していることを前提として綴らせていただきます。
何度も言いますが、あくまで守るためであることから所々不適切な見解が見られるかもしれません。しかし、憲法はかなり難しい科目であると思っておりますので、このような考えでも十分A答案は目指せると思います。現に私はA答案を取ることができました。
守るということ
守りの答案を作るために、私は現場思考をいかになくせるかが重要だと思いました。そこで、重要なのは事前準備と思考フローの単純化です。以下は、ここに着目してお読みください。
保障範囲
ここは、有名な権利については判例、学説をべた貼りすれば突破できる場所と言えます。判例で論証される自由としては取材の自由、情報摂取の自由、閲読の自由などをイメージして欲しいです。学説で論証される自由としては集団行進の自由などをイメージして欲しいです。
いずれも、判例の文言及び基本書の文言を覚えて貼り付ければいいだけです。
したがって、事前準備で制圧できます。
制約
ここは、端的に「〇〇によって、本件自由を制約している。このような制約が許されるか。」と書けば足りると思います。
基準定立
基本の考え方
憲法の基準は、『判例から』という、という原則を頭に入れて欲しいです。たしかに、権利の重要性、制約の程度から基準を導くというのも誤りではないと思います。しかし、このようなフリーハンドの基準を定めることは違憲審査基準をそもそもたてた趣旨(裁判官による裸の比較衡量を防ぐ、とかだった気がする)を没却します。
憲法の基準は、思考停止で、権利が重要だ、とか制約が大きいとか書く前に、問題と似ている判例の事例を想起し、その事例と問題文の事例が全く同じならば判例の基準を使う、という姿勢が必要です。そして、全く同じとは認められない場合、その事例との共通性を導き出し、「判例の射程」を論じる必要が出ていきます。(ただし、判例の射程で基準を導く書き方をするためには基準をはっきり示してくれている判例が必要なため、これがなかった場合は、学説に従って基準を作る必要が出てきます)
この判例の射程を論じることが難しいのでここの部分をいかに単純化するかが問題になっていきます。
基準定立要素という考え方
憲法判例を読んでいくと、審査基準には、審査基準を使用するための要素、厳格にする要素が存在することがわかります。これを私は基準定立要素と呼んでいました。射程とはこの基準定立要素の有無を論じれば足りるのです。具体的には下記を見てください。
職業の自由の例
職業の自由についての有名な判例は、薬事法違憲判決です。
この判例は、
職業の自由に対する①強力な制限については、[重要な目的を達成するために、必要かつ合理的な手段]であれば許される。
上記に加え
②その規制目的が消極目的である場合は、当該規制手段より緩やかな規制手段では、規制目的を達成することができない場合にのみ合憲
という基準を設定しています。この基準のうち、基準定立要素は、①強力な制限②規制目的が消極目的であること、の2つです。強力な制限があれば、①の基準が使用され、かつ、消極目的であれば②の基準が加えられる、といった感じです。
つまり、答案では、基準を設定して、強力な制限があるか、規制目的は何か、という2点にのみ思考を巡らせば足りるのです。
そして、いかなる場合に、強力な制限に当たるのか、どういう場合に規制目的が消極目的と言えるのか、というのも準備可能です。職業の自由を描く場合は、ここまで、全部事前準備で対応することができるのです。
私は、職業の自由は下記の点のみ論証をしようと思っていました。令和6年司法試験でも同様に記載しましたので、よければ再現答案を見てみてください。
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基準の不存在
では、その前提となる「強力な制限」がないとき、職業の自由の基準は一体どうなるのか、というのが問題になってきます。結論は、ここまでやってきて、やっと自由に審査基準が定立をすればいい、ということになります(判例の議論を踏まえずにいきなりは✖️)。
ただし、その際も軸足は判例に置かなければなりません。具体的には、まず、判例の要素を満たさない、ということを丁寧に論証する(頭の中に留めない)。そして、要素がどの程度足りないのか、を見ていく(どの程度強力な制限とは言えないのか、前提はないものの消極目的である、みたいな感じ)ということです。
このような書き方ができれば、最終的に紋切り型の基準であったとしても低い評価は与えられないと考察しています。
目的審査について
型
ⅰ)目的を絞る
ⅱ)目的の重要性、必要不可欠性を判定する。
→①単純に重要と言えるか(人を差別することを目的としているなど)
②弊害発生可能性(立法事実による根拠があるか)
具体例
使用後の学校用プールに子供が落ちる、という事件が多かった。
そこで溺死することを防ぐために、
「1条 児童の生命身体を保護するために作った法律
2条 使った後のプールは、水を全部抜いてその上にマットを引くこと」
という法律があったとする。
児童の生命保護、というのは抽象的にすぎる。だから、これを絞って、使用後プールによる溺死の防止 というのが真の目的である。[絞る]
生命の保護は必要不可欠[①]。しかも、実際に溺死する事故が多発していた[②]。
目的を絞るとは
憲法の問題は、ある人の自由を何らかの理由(目的)で制約する、というところから始まります。この目的を特定することが重要です。
この目的は、極端に言えば世界平和や地域の安全などといった抽象的なものが挙げられます。このような目的は究極的には合っているのでしょうが、憲法の考え方では、このような抽象的な目的で人権というものが制約されるのは許されません(弊害発生可能性の議論とも関連)。
したがって、立法事実又は規定ぶりから真の目的を絞り出さないといけません(これをやらないと適合性審査ができない)
目的の重要性について
目的が重要だ、正当だ、なんて主観以外厳しい、というのが私の理解です(必要不可欠性は憲法上の権利を制約されるような場合という認識)。
したがって、目的がよっぽおかしい(差別をすることを目的)、みたいな場合以外はここの審査は、「重要だ」とか言ってスルーでいいと思います。つまり目的審査は何より、目的を絞る、ということが重要になってくる、という話です。
弊害発生可能性について
ここは少し応用な気がします。したがって、書かなくても足ります(正確に理解すればここで書かなくとも手段審査で触れることのできる事情)。
制約をする必要は何らかの弊害があるからであるところ、このような弊害が生じる可能性がないならば、そのような発生するおそれのない危険を目的に人権を誓約することは許されない、ということになります。これを目的の重要性と表現するのです。立法事実が問題に記載してあるので、これを利用します。
個人的には、弊害が多いから重要、という話は納得がいっていません。なので、ここでは立法事実を使わず、関連性審査で丁寧に書くこととしてました。
手段審査
適合性(関連性)審査について
憲法の手段審査は、適合性、相当性、必要性の3観点で行われる、という記載はいろんな基本書で書かれています。このうち、究極的に言えば適合性審査だけすれば足ります。
適合性審査とは、簡単にいうと、意味あるかないか審査です。目的を達成するためにその手段は意味があるのか、というのを云々論証すれば足りるのです。ちなみに実質的関連性とは、これが完璧に意味ある手段の場合を指していると理解しています。一応、関連がある(意味がある=合理的関連性)、とこれを超える意味のある手段はない(めっちゃ意味ある=実質的関連性)みたいな感覚です。
後者の方は言うならば、必要性審査も行っていると評価できます(主観で言ってます、正確ではないはず)。
弊害発生可能性についての立法事実はだからこういう弊害を防げる、のような文脈で使うことができます。
必要性審査・相当性審査について
必要性とは、代替手段の存在を見ること(代替可能性)、相当性とは、やりすぎではないか、という話です。
これを私はあまりやりたくありません。
理由は、頓珍漢な代替手段を出したとしても、当然代替できるわけが無いから議論として意味がない。やりすぎているか否かが主観にとどまるので、根拠に欠けてやる意味がない。 と言えるからです。
もちろん誘導があればやりますが、意味のないことを書くくらいならば、適合性を丁寧にする方が点が稼げます。
具体例
性犯罪をおこなった人に①GPSを埋め込むという手段と②両腕を切り落とす、という規制手段を取るとします(目的は、再犯の防止 とする。公共の安全みたいな抽象的なものにしない)。
①GPSを埋め込まれた状態で犯罪を行えば、すぐに逮捕されることから犯罪を萎縮させ再犯の防止に役立ちます(意味があります)。しかし、現実的に言えば、逮捕はされるもののその場の犯罪を防止することには役立ちません。したがって、実質的関連性は認められません。
②両腕を切り落とせば、犯罪ができません。犯罪を行えない状態にすることは、再犯の防止に手も役立ちます。しかし、当然ながらやり過ぎ(相当性が欠ける)と言えます(これをいかに主観ではなく、憲法13条の自己決定権の侵害だ、犯罪以外の全てのことができなくなるので身体の自由を制約しているなどして、相当性を客観的に論証します)。
こんな感じで手段審査をします。
まとめ
事前準備としては保証範囲、判例の基準、基準定立要素を整理、暗記が必要です。
また、書くことが少ないのではないか、という人もいるかもしれませんが、むしろこのくらい思考フローを単純化したほうが丁寧な当てはめができるので、詳細な論証ができると思ってます。