H30刑事訴訟法を出題趣旨と採点実感で分析する
はじめに
『』は出題趣旨と採点実感の引用。
1人の合格者が個人的に読みといたものをまとめたに過ぎないため、読む際は十分に気をつけて欲しいです。
設問1
捜査の適法性が問われている。『強制処分と任意処分を区別する基準,強制捜査又は任意捜査の適否の判断方法についての理解と,その具体的事実への適用能力を試』が試されているらしい。この文言とどう趣旨のことが令和6年司法試験でも記載されており、かつ、問題自体もかなり酷似しているため、平成30年を適切に検討していた受験生はかなり有利だったのではないか、と考えられる。したがって、下記に引用する記事も踏まえて読んでいただけるとうれしい。
出題者はまず、『ある捜査活動がいわゆる強制処分に該当する場合,刑事訴訟法にその根拠となる特別の規定がある場合に限って許されるため(同法第197条第1項ただし書き,強制処分法定主義) ,当該捜査活動が強制処分に該当するのか,それとも任意処分にとどまるのか,両者の区別』を問題にしている。そして、区別するにあたっては、判例等に留意しながら『強制処分に対する規律の趣旨・根拠を踏まえながら,強制処分と任意処分とを区別する基準を提示することが求められている』らしい。
そして、『捜査活動が強制処分に至っていると評価される場合には,現行法の法的規律の在り方に従ってその適否(法定された既存の強制処分の類型に該当するか否か,これに該当する場合には法定された実体的及び手続的要件を充足するか否か)を検討することが必要とな』り、一方、『任意処分にとどまると評価される場合であっても,当該捜査活動により何らかの権利・利益を侵害し又は侵害するおそれがあるときは,無制約に許容されるものではないことから,任意捜査において許容される限界内のものか否かが問題となる』。
このように、かなり詳細に論証の流れを提示している。
まとめると、①強制処分の基準をはる②当てはめる③強制処分なら、強制処分法定主義と令状主義の検討③`任意処分なら、任意処分の限界を基準を示し、当てはめる。という流れであると私は読み取った。この流れは令和6年であっても同様と読み取れるので、賢く点を稼ぐために理解しておく必要がある。
平成30年採点実感は、特に任意処分の限界を論じる際に必要性とは『特定の具体的な捜査手段を用いる必要性を指し,本問についてこの点を論じるに当たっては,なぜ「甲を」 「ビデオカメラで撮影する」必要があるか,すなわち前者については甲を被写体として選択する理由となるその嫌疑の内容及び程度について,後者については捜査手段としてビデオカメラによる撮影という方法を採る必要性について,これにより達成すべき捜査目的との関係を踏まえて検討すべき』と詳細に記載されていることからとても参考になる。
捜査①の具体的検討
私は、司法試験について、事実の指摘と指摘した事実の評価の両面で点が入ると分析している(私見)。これは、事実の羅列にとどまる答案に対して厳しいコメントを採点実感等で残している一方で、事実に触れること自体は求めているように読めるからである。
捜査①については、強制処分該当性において、『対象者に認識されることなく秘密裏に撮影したこと, 公道上にいる対象者について, 事務所の玄関ドアに向かって立ち, ドアの鍵を掛けた後,振り返って歩き出す姿を約20秒間にわたり撮影したこと』、任意処分の限界を論じる点において『被害額100万円の詐欺事案であること,Vが犯人から受領した領収書には「A工務店代表甲」と記載されていたこと,被撮影者はA工務店事務所に出入りする人物であること,Vは犯人の顔をよ
く覚えていない旨供述していたこと,公道上にいる男が,事務所の玄関ドアに向かって立ち,ドアの鍵を掛けた後,振り返って歩き出す姿を約20秒間にわたり撮影したこと,Pが撮影した場所は,公道上に駐車した車両内であること等の具体的事実を指摘』することを求めている。
このような事実を指摘することで評価されると考えている。強制処分該当性と任意処分の限界はいずれも権利の侵害の性質・程度の論証を求めるがその際に引用される事実について私は、一定程度重なりがあると考えており、これは出題趣旨からもそう読み取っている。
捜査②の具体的検討
『両者は,そこで制約される権利・利益の内容やその要保護性の程度,撮影方法等が異なっていることから,この点を意識して論じる必要がある』らしい。つまり、本問のように、司法試験において似た状況で同様の問われ方をしている場合はこれらの相違点、共通点を意識した論証をすれば点が入るのではないか。
そして、出題趣旨は、特に『不特定多数の客が出入りすることが想定されていない上,窓にブラインドカーテンが下ろされており,内部の様子を公道から見ることができないA工務店事務所内を,向かい側にあるマンションの2階通路から,望遠レンズ付きビデオカメラで,同事務所の玄関上部にある採光用の小窓を通して約5秒間にわたり撮影したというものであり,同事務所は,住居ほどでないとしても,公道などとは異なりなお私的領域たる性格が認められる場所であること,承諾のない限り,通常,事務所内に侵入しなければ確認できないような状態にある対象を撮影していること』を指摘することを求めている。
令和6年との比較
たくさん事実を引用する必要があるかのように説明したが、個人的には、これらの事実全てを引用することが合格答案との関係で必要不可欠である、とは考えていない。
実際に「一応の水準」に達している答案とは、『強制処分と任意処分を区別する基準,任意捜査の適否の判断方法に関して一定の見解を示すことができてはいるものの,本事例に現れた具体的事実の抽出が不十分であり,結論のみを記述している答案』としている。そして、この出題趣旨が詳細にだされているにもかかわらず、令和6年において「一応の水準」は『強制処分の意義や任意処分としての適法性の限界が問題となる、理由が意識できていない上、条文の解釈や判例を意識することなく不十分な法解釈しか示すことができず、当てはめにおいても、各ビデオ撮影により乙のいかなる権利・利益が侵害され、どの程度侵害されているのかという点に対する配慮が不十分であり、物足りなさを感じさせる答案』とそこまで改善されていないようにも思える(書いた人が違うだけにも読める…)。
ただ、私としては合格ラインというところだけ言えば、まず、上記に挙げたような、論述の流れを適切に守ること、その中で何個かの事実に気づき評価する態度を見せることが重要だと考えている。
説明2
後日、記載。