
R4刑事訴訟法を出題趣旨と採点実感で分析する
はじめに
『』は出題趣旨と採点実感の引用。
1人の合格者が個人的に読みといたものをまとめたに過ぎないため、読む際は十分に気をつけて欲しいです。
設問1
全体的に
設問1は、『おとり捜査の適法性の判断基準に対する理解と具体的事案への適用能力試すもの』らしい。つまり、論点としては、おとり捜査である。
この論点はR4においては、かなり以前に出てからの久しぶりの出題である。
おとり捜査をを論じるためには『前提として、おとり捜査の意義に関する理解を示すことが求められ』ている。出題趣旨、採点実感の両方で明示的に定義を示せ、と書かれているが、このようにはっきりと定義を要求することは珍しいと思っているので、私としては、定義を多岐せつに示すだけで点がもらえると分析している(逆に定義を書くだけなので書かないと書いた人との差がはっきりしてしまう)。
そして、『おとり捜査の法的性質についても論じることが求められ』ている。この記載について、具体的に司法試験はいかなることを論じろと求めているのかがはっきりわからなかったのだが、『刑事訴訟法に特別の根拠規定がなく、平成16年決定も、おとり捜査が刑事訴訟法第197条第1項に基づき任意捜査として許容される場合があるとしていること…』という記載も併せて書いてあるため、ここでは、おとり捜査が強制処分or任意処分のいずれに当たるかを論ずることを求めていると解釈した。
もっとも、記載にあるように仮に強制処分に該当すると考えるならば、強制処分法定主義に反し、一発で違法と結論づけられてしまうので、私は、任意処分で書く方が無難であると思った(問題文の事実をより多く引用しやすい→点を稼ぎやすそう)。具体的には、「対象者の犯罪を行うか否かの意思の自由は確保されており、また、対象者が当該行為が犯罪として禁止されていることを理解している以上、意思決定をするうえで必要な最低限の基盤は与えられていると言える。したがって、対象者の自己決定権を侵害することはなく、かつ、その他対象者の権利を侵害されているとは言えないので、強制の処分には当たらない。」という論証を貼り付けていた。
任意処分であることを結論づけたあとは、『おとり捜査が違法とされる実質的理由』を踏まえ、その当てはめをする必要がある。実質的理由について採点実感は、『不公正な捜査方法であるからとする考え方、国家が犯罪を創出し法益侵害を生じさせるからとする考え方、人格的自律・個人の尊厳に対する侵害があるからとする考え方などがある』としている。したがって、通常の任意処分の限界を論じる時と当てはめ方が異なるはずである。
当てはめ方については、出題趣旨は範囲誘発型、機会提供型に区別して論じる方法や捜査比例の原則に従い当てはめる方法が出題趣旨で提案されている。これについて、私は柔軟な当てはめが要求される場面で定義を固めて当てはめるというのは点を稼ぎづらいと考えている(妥当な結論にするために事実を定義に合わせるという逆転現象が起きるから)ため、前者をそのまま採用するのはおすすめしない。実際に出題趣旨でも、『平成16年決定は、おとり捜査の適法性について、必ずしも機会提供型と犯意誘発型のどちらに当たるかのみで判断しているわけではないことにも留意する必要がある』としており、そのような当てはめ方を推奨していない。
そこで私としては、基本的な当てはめの枠は必要性・相当性で行うがその重み付けに、機会提供に過ぎない、犯意を誘発しているので良くない、等の評価を行うことをおすすめする。こうすることで、そこに振られているであろう点を拾いつつ(このような見解があることを知っていることのアピールをしつつ)、採点者に単に定義に当てはめているわけではない、という判例の適切な理解もアピールできるからである。
具体的なあてはめ
出題趣旨は、プラスの事情とマイナスの事情をわかりやすく記載してくれているので、記載ある事実をその方向に併せて評価していけば足りる。適法の要素として、『おとり捜査の対象となる犯罪は、大掛かりな大麻密売をしている疑いがある者として把握されていた甲による大麻密売事案であり、大麻の密売先は紹介者に限られ、密売に使用される携帯電話の契約名義は架空人名義で、その番号も変わり、甲の氏名や身元などは判明せず、その後、司法警察員らが甲を尾行した際も見失っている。また、捜査協力を申し出たAにより甲が今でも大麻を密売しているとの情報が得られ、その後、甲はサンプルとしての大麻の取引に応じ、その際、10キログラム程度の大麻であれば取り扱うことがある旨述べている。また、大麻密売事案は、直接の被害者がいない犯罪で、さらに、本件で売り渡される大麻は、おとり捜査を通じて司法警察員らにより回収されることが見込まれている』こと、違法の要素として『甲は、サンプルとしての大麻の取引の前に、司法警察員Pに対し、取引場所を気にする発言をし、気が進まない旨述べ、これに対し、Pが取引場所を手配している。また、甲は、本取引の前日には、明日の取引はやめたい旨述べたが、これに対し、Pは暴力団X組と交遊があるかのように装い、約束した代金の1.5倍の代金を払う旨や同じ単価で10キログラムの大麻を買っても良い旨述べた上、Aに指示し、PがX組と取引のある信用できる人物である旨甲に告げさせている。
また、本設問では、司法警察員らは、甲からサンプルとしての大麻を譲り受けた際に甲を逮捕せず、その後、より大量の大麻を取引する際に甲を逮捕している』こと、である。
例えば、司法警察員らにより回収されることが見込まれているという事実は、法益侵害が生じないため実質的違法理由を否定するので適法より、サンプルの大麻を譲り受けたのにあえて逮捕しないことは、不公正と評価できると思う。
書く流れ
私は、分析するに、
① おとり捜査と位置付ける
→定義を示し、当てはめる。
②強制処分ではないことを確認
→強制処分の定義、当てはめ。
③ 判断枠組み
→おとり捜査の問題点指摘。この問題点と捜査の必要性の比較衡量がしやすい基準を作る。当てはめ。
設問2
以下、後日記載。