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R2刑事訴訟法を出題趣旨と採点実感で分析する
はじめに
『』は出題趣旨と採点実感の引用。
1人の合格者が個人的に読みといたものをまとめたに過ぎないため、読む際は十分に気をつけて欲しいです
設問1
設問1は、『被疑者に対する任意取調べの適法性に関する判断枠組みの理解及び具体的事実への法適用能力を試すものである』。
任意取調べの適法性に関する適法性について取り扱った判例として、『高輪グリーン・マンション殺人事件』がある。これによると、『任意捜査の一環としての被疑者取調べは,第一に,強制手段によることはできず,第二に,強制手段を用いない
場合でも,事案の性質,被疑者に対する容疑の程度,被疑者の態度等諸般の事情を勘案して,社会通念上相当と認められる方法・態様及び限度において許容されるという二段階の適法性の判断枠組みを示している』らしい。したがって、論証する際は、この二段階の流れで論証することが無難であると分析する。
そして、『判断枠組みの第一段階にいう「強制手段」については,刑事訴訟法第1
97条第1項但書にいう強制処分該当性の問題として位置付け, その意義を明らかにするなど,実定法上の規定との関係をも意識しつつ論じることが求めら』ている。これについては、令和6年司法試験等で行う、強制処分の基準→当てはめと同様のことをすればいいと思われる。
この当てはめについて、本問では、たしかに『甲が取調べに応じる旨明示的に述べており, 取調べを拒否する申出をしていない』。しかし、採点実感によればこれにとどまらず、『黙示の意思(ないし合理的に推認される意思)』言及すること及び、『長時間にわたり徹夜で,更に偽計をも用いて行われた本件取調べが甲のいかなる権利・利益を制約するのか』といった点に着目して論証することが求められている。ただ、ここで注意したいのが、黙示の意思に着目しすぎるあまりに前提となる明示的な意思について触れない答案である。特に令和2年以降の受験者はこの出題趣旨を見て答案を書くと予想されるので、このような注意喚起を意識するあまり原則を忘れることが無いよう、注意なければならない。
第二段階を論するにあたってはまず、その基準が問題となる。これについては、任意処分の限界の基準は、受験生の多くが 『最決昭和51年3月16日刑集30巻2号187頁(以下「昭和51年判例」という。 )が判示する,「必要性,緊急性なども考慮したうえ,具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容される」との判断基準』を採用すると考えられる。これに対し、出題趣旨、採点実感はいわゆる判例の射程的な話や高輪グリーンマンション事件の二段階目の基準と同視できると論ずること等を求め、思考停止でこの基準を張ることを批判しているように読める。そして、他の過去問においても、任意取調べにおける高輪グリーンマンションのようなクリティカルな判例がない場合であっても同様に昭和51年判例の基準を思考停止で貼ることに問題意識を持っていると読める。ただ、受験生としては多くの基準を持ちたくない、というのが素直な感想ではないだろか。
私はこれについては、①まず有名な判例や代表的な事例があるならしょうがないからその判例の基準や学説の基準を覚える(任意取調べやおとり捜査など)②特にないなら批判覚悟で昭和51年判例の基準を張る(ちょっといろんなものに対応できるようにアレンジしたもの)
という対応策をとっていた。こうすることで、①で処理できる部分は、昭和51年を用いることの判例の射程を延べなくて済むし、②はたしかに点を少し落とすかもしれないが他の受験生もやらない予想される作業であるため相対評価のもと大きな差にはならないし、かつ、時間がシビアの刑訴法でそこに時間を費やすのは他の論点に割く時間が減り潜在的に減点となるからである。
よって、今回では『事案の性質,被疑者に対する容疑の程度,被疑者の態度等諸般の事情を勘案して,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度において,許容される』という基準を用いるであろう。
具体的に着目すべき事実は、『約24時間という長時間にわたり,一睡もさせずに徹夜で,その間に疲労して口数が少なくなっていた甲に対し,本件住居侵入窃盗事件当日の夜,甲が自宅から外出するのを見た人がいる旨の偽計をも用いて行われた』点である。
設問2
以下、後日。