平成24年刑事訴訟法を出題趣旨と採点実感で分析する
設問1
設問1は、「刑事訴訟法第218条第1項の定める捜索差押許可状に基づく捜索及び同法第220条第1項第2号の定める逮捕に伴う捜索についての正確な理解と具体的事実への適用能力を試すものである」。
捜査①
捜査①においては、「捜索場所に捜索実行中に届いた荷物であることと有効期間内における捜索が許可されたこととの関係,乙宛ての荷物であることとT株式会社の管理する場所内の捜索が許可されたこととの関係,平成23年10月5日に捜索場所に新たに持ち込まれた乙宛ての物であることと被疑事実(同月2日の甲による覚せい剤の営利目的所持)に関連する覚せい剤等の捜索が許可されたこととの関係」の3点に触れることが求められている。
簡単に言えば、①郵便物に対する捜索②これが乙宛てであるが許されるか③証拠存在の蓋然性の有無 である。
おそらく、出題趣旨を解釈するに、郵便物に対する捜索差押えは、「捜索差押許可状の有効期間内であれば司法警察員Kは,いつでも適法に捜索差押えを行うことができ」ると考えるのが妥当。これは、「裁判官がどの時点における捜索する正当な理由を審査しているのか」、つまり、有効期間内であれば正当な理由がある、と審査したこと、仮に、「捜索開始(令状呈示)の前後で適法違法が分かれるとすると,司法警察員Kが乙宛ての荷物が届けられた後に捜索を開始すれば適法に差し押さえることができるのにたまたま捜索開始が早かったために違法になること」等を理由とするだろう。
そして、前提として、「捜査機関は,その許可された範囲内でのみ捜索を行うことができ」、かつ、「裁判官は,捜索すべき場所に存在する物(かばん,アタッシュケース等移動させることが可能な物を含む。 )についても捜索すべき場所と一体のものとして併せて捜索する正当な理由を判断している。」この範囲は、原則、同一の管理権内に限定されて許可される。つまり、限定した場所に対する捜索差押令状の効力は、同一管理権の中にある物であれば、及ぶと考えられる。
したがって、乙宛ての荷物について、T株式会社と同一の管理権にあることを論じなければ捜索できない。出題趣旨は、「荷物の宛名は乙であるが,送付先はT株式会社であること,同社は人材派遣業を営んでおり,裁判官にとっても同社事務所に従業員がいると当然予想されたところ,現に令状発付前から同社事務所で従業員が働いていることが判明していたこと,乙は同社の従業員であること,甲の携帯電話に残されたメール内容等によれば,甲と乙は共同して覚せい剤を密売しており,丙から甲が乙宛ての荷物の中身を分けるように指示されていて甲が乙宛ての荷物の管理・支配を委ねられているとうかがえること等を検討」することを求めている。
捜索をするためには、証拠物が存在する蓋然性が要求される。出題趣旨は「被疑事実の中に営利目的が含まれていること,甲が同社事務所社長室で覚せい剤取締法違反の検挙歴ある者に覚せい剤を売ろうとし,同社事務所に同検挙歴のある者数名が出入りしていて被疑事実についても常習的犯行の一環であると推測されること,前記メール内容等から甲,乙が覚せい剤を共同して密売していることがうかがえ,被疑事実についても乙が共犯者である可能性があること,このメール内容等と符合するように指定された日時場所に甲宛てと乙宛ての2つの荷物が同時に届き,それぞれの伝票の筆跡が酷似し,記載された内容物はいずれも書籍であるだけでなく,同一の差出人名でその所在地の地番が実在せず電話番号も未使用であること,荷物が届いた際の甲,乙の会話内容が不審であり,司法警察員Kから荷物の開披を求められても乙は拒絶したこと等」を指摘し、評価して当てはめることを要求している。
まとめると、証拠存在の蓋然性を記載するなど、差し押さえの前提知識と典型論点を押さえていれば、問題文中に現れる事実を踏まえることでそれなりの答案を作成できると考えている。
設問2
以下、後日。