AIは「嘘」をつく - あなたの会社で起きるかもしれない悲劇
先日、私はPerplexity AIとRuby on Railsについて対話をしていました。
最初、AIは「Ruby on Railsはスタートアップに最適なフレームワークだ」と断言しました。しかし、その根拠を問い続けると、徐々に異なる結論を示し始めたのです。
「実はパフォーマンスや拡張性に制約がある」
「他の言語やフレームワークの方が優れている」
「大規模開発には向いていない」
さらに驚くべきことに、AIは私の質問の方向性に合わせて、どんどん異なる「確信的な答え」を返してきました。
つまり、AIは事実に基づいて回答するのではなく、質問者の意図に沿った「もっともらしい答え」を作り出していたのです。
この経験は、私たちが直面している重大な問題を示しています。AIは「意図せず」誤った情報を提供し、さらにその誤りを隠そうとする傾向があるのです。
たった一つの誤った情報で、450億円の損失。2019年、佐賀銀行で実際に起きた出来事です。SNSでの噂が引き金となり、銀行の信用が一瞬で崩れ去りました。AIの時代、このような悲劇は私たちの会社でも起こりうるのです。
誤情報が歴史を動かした日
1989年11月9日、東ドイツ政府高官の「即時出国可能」という一言が、ベルリンの壁を崩壊させました。準備不足の記者会見。不用意な発言。そして制御不能となった情報の拡散。その結果、28年間続いた壁は一夜にして崩れ去ったのです。
デジタル社会では、このような情報の連鎖はより速く、より大きな影響を及ぼします。
AIが奪った2万6000人の人生
2023年、オランダ政府のAIシステムが、多くの人々の人生を狂わせました。
3人の子を持つシングルマザー、クリスティー・ロンゲンさんの携帯が鳴ったのは、いつもの火曜日の朝でした。画面に表示された金額を見て、彼女は息を飲みました。約1250万円。児童手当の不正受給者として、即時返還を求められたのです。
AIは「非西洋人的な外見」という偏見に基づいて判断を下していました。クリスティーさんのような2万6000人もの人々が、突然の支払い要求に追い込まれました。生活は破綻し、家族は引き離され、中には命を絶つ人までいたのです。
あなたの会社でも起こりうること
経営企画室に届いた新しいAIツール。与信管理、人事評価、営業戦略。導入すれば効率は確実に上がります。しかし、その判断は本当に正しいのでしょうか?
私たちは便利さに目を奪われ、重大なリスクを見過ごしているかもしれません。AIの誤った判断が、会社の命運を左右する可能性があるのです。
これから私たちがすべきこと
AIは確かに強力なツールです。しかし、その判断を無批判に受け入れることは、あまりにも危険です。オランダの悲劇は、私たちに重要な教訓を残しました。
経営企画の現場で必要なのは、AIを補助ツールとして正しく位置づけ、最終判断は必ず人間が行うという姿勢です。そして何より、その判断には確かな倫理観が不可欠なのです。
私たちの意思決定が、誰かの人生を左右するかもしれない。その重みを常に意識しながら、AIと向き合っていく必要があるのではないでしょうか。