収益予算の組み方
「毎年予算を立てているのに、なぜか実績との乖離が大きい...」
「予算を立てても、いつも後手に回ってしまう...」
多くの企業では、売上予算、原価予算、経費予算などの個別の予算を立てています。
しかし、これらの予算を個別に管理するだけでは、企業全体の収益性を適切にコントロールすることは困難です。
そこで重要となるのが「収益予算」という考え方です。
この収益予算という視点で予算管理を見直すことで、予算と実績の乖離を最小限に抑え、より効果的な経営管理が可能となります。
では、具体的に収益予算はどのように機能し、どのように活用すれば良いのでしょうか。
そもそも収益予算とは
収益予算は、企業の収益性を管理するための包括的な予算システムです。売上高予算、売上原価予算、販管費予算、そして営業利益予算という4つの予算が有機的に結合し、一つの管理体系を形成します。
例えば、ある食品メーカーの収益予算は次のような構成になっています。
売上高予算では、主力商品Aの売上50億円を含む総額100億円を計画。
これに対して売上原価予算は70億円で、原材料費や製造人件費などが含まれます。
販管費予算は営業人件費や広告宣伝費など20億円を見込み、
結果として営業利益予算は10億円と設定されています。
この一連の予算設定をまとめて「収益予算」と呼ぶのです。
収益予算の特徴
収益予算の最も重要な特徴は、各予算が相互に密接に関連している点です。売上が増加すれば、それに伴って原価も変動し、販管費にも影響が及びます。
このような相互関連性を理解し、適切にコントロールすることが、収益予算管理の核心となります。
ある製薬会社では、新製品の発売に伴う売上増加を見込む一方で、それに必要な研究開発費や販促費の増加も予算に織り込みました。
このように、収益予算は企業活動全体を包括的に捉える視点が不可欠です。
収益予算の役割
収益予算は単なる数値目標ではありません。それは企業の成長戦略を具体化し、その実現可能性を検証するためのツールです。
例えば、食品メーカーAでは、収益予算を通じて「原材料費の高騰という逆風の中で、新商品の投入により売上を10%伸ばし、製造プロセスの改善で原価率を2%下げる」という具体的な成長シナリオを描きました。
このように、収益予算は企業の未来を描く「物語」としての役割も果たしているのです。
予算管理の実践
収益予算を効果的に機能させるためには、適切な管理体制の構築が不可欠です。ある製造業では、以下のような管理サイクルを確立しています。
まず、月次での予実管理を基本としながら、重要な環境変化が発生した際には即座に予算の見直しを行います。
予算と実績の差異が発生した場合は、その原因を構造的に分析し、必要な対策を講じます。
例えば、原材料価格の急激な上昇により原価率が悪化した際には、代替材料の検討や製造プロセスの見直しなど、具体的な改善策を実行に移します。
予算精度の向上
予算の精度を高めるためには、市場環境の変化を的確に捉え、それを予算に反映させる仕組みが重要です。
ある小売業では、POS データの分析により売上トレンドをリアルタイムで把握し、必要に応じて予算の修正を行っています。また、競合動向や消費者動向などの外部環境の変化も、定期的に予算に反映させています。
成功のポイント
収益予算で成功を収めている企業には、いくつかの共通点があります。
第一に、予算を単なる数字の目標としてではなく、企業の成長ストーリーとして捉えています。市場環境の変化、競合の動向、自社の強みなど、様々な要素を織り込んだ「物語」として予算を組み立てることで、より実現可能性の高い計画となります。
第二に、全社的な取り組みとして予算管理を位置づけています。予算は経理部門だけのものではなく、全部門が主体的に関わる経営管理ツールとして機能しています。
第三に、柔軟な予算修正の仕組みを持っています。環境変化に応じて適切に予算を修正することで、より効果的な経営管理が可能となります。
おわりに
収益予算は、企業の未来を描く重要なツールです。それを効果的に活用することで、より確実な成長への道筋を描くことができます。
予算と実績の差異に悩む企業は多いものの、適切な管理体制を整え、全社一丸となって取り組むことで、必ず改善への道は開けるはずです。
本記事で紹介した考え方や手法を参考に、自社の収益予算管理の改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。