何様?
1ヶ月程前から、1人でふらりと来るようになった高齢女性客。
多い時は週に2日来ることも。
ただ、来る度に何かしら文句を言う。
「そっちの客は後で良いから早く私の注文を取りに来なさい!」
「ちょっと!早くお冷(水)を持ってきなさい!私を誰だと思っているの!」
「私が注文したら直ぐに持って来なさいよ!私を優先しなさい。ダメね、この店は!」
「私の席はあの場所よ!私の名前付けて専用席にしてちょうだい。テーブルクロスは赤にして、いつも百合か薔薇の生花を飾っておいてちょうだい。椅子はこんなに固いのじゃなくてソファにしなさい」
「何よコレ。不味いわねー。よくこんな物を出すわね。本当にダメな店ね」
「ちょっと!アンタ退きなさい!トイレを使うのは私が先よ!私を誰だと思っているの?」
毎度毎度、店内に響き渡るほどの大声で。
ある日のこと。
「ちょっと!その席は私の専用席よ!アンタ図々しいわね!直ぐに退きなさいよ!」
先に来店し食事をしているお客様に対しとんでもない文句を言っていた。
空いている席に案内したが隅っこだったのが気に入らなかったらしく、店の真ん中に位置するその席に座りたかったようだ。先客は食事中、退かすなんてありえない。専用席なんて設けていないのだし。
空いている席に座っていただくか、もしくは希望の席が空くまでお待ちいただくように伝えた。
すると、
「なんで私が待たなくちゃならないの?あの客を退かせばいいだけでしょ?早くしてちょうだい!私はココを贔屓にしてあげてるのよ!あの席は私がいつでも使えるように専用席にしろって言ったじゃない!だからこの店はダメなのよ!」
食事をされていた先客は困り顔をしながら「移動しましょうか?」と言ってくれたが、ここは毅然とした態度を取らなければ今後に影響する。
「お客様、他のお客様のご迷惑になりますので大変申し訳ありませんが、お帰りください」
それに対し激高した高齢女性は
「あんた!失礼じゃない!誰に向かって言ってる!本当に失礼だ!傷付いた!慰謝料請求してやる!あんたを訴えてやるからね」口角から泡を立たせながら大声で理不尽な文句を言う。
「訴えるのでしたらご自由に。こちらは営業妨害として警察に訴え、防犯カメラを証拠として提出しますので。間違いなくカスタマーハラスメントの扱いになると思いますので、ご承知おきください」と伝える。
「そんな脅し通用しないわよ!何がカスよ!カスじゃないわよ!私は高齢者よ!!優先して大事にして然るべきでしょ!こんな店2度と来てやるもんか!」
なんのこっちゃ……
店内が一瞬シーンと静まる。
そんな中、1人のお客様がポツリ
「ああいう低俗な方がいらっしゃるから高齢者は老害なんて呼ばれてしまうのかもしれませんね。困った方ですけれど、とても可哀想な方ですわね」
こちらも時々来られる高齢女性。
1人で来店し、いつも無言で紅茶を飲んで帰るのだが、笑顔と感謝の言葉を絶やさない穏やかな雰囲気の人なのだ。
人それぞれの生き方で人格が真逆になるものなんだと、お客様を通して改めて感じるのであった。