私の知らないところで幸せになって
別れた彼氏と電話をした。
2度目だった。
特に何か用があるわけでもなく、話し相手が欲しかったからかけた。
学校の友達でも仲良しの幼馴染でもなく、他校の気が合う元彼と話したかった。
近況報告をし合った。
別れてからお互い恋人はいなくて、好きな人もいない。
なぜか安心した。
あの頃に比べて何か変わったこともなく、驚くほどに時間だけが過ぎていた。
君の匂いがするルームスプレーは相変わらず使ってるし、ぬいぐるみを投げ合ったベッドも変わらない。
強いて言えば、扇風機が暖房器具になったくらい。
君も何も変わってないね。
人肌恋しい季節が来るねって笑い合って
今年は恋人がいないクリスマスかって
去年のことを思い出す。
もうすぐで君の誕生日が来る。
一昨年、私たちが初めてキスをした日。
あぁ、その前にハロウィンの日か。
去年、私たちが初めてお別れをした日。
初めて一緒に泣いた日。
初めて無理して笑った日。
初めて帰り道を君に送ってもらわなかった日。
思い出だけ置いてけぼりで、私たちは大人になってく。
きっと、君にもう一度会ってしまったら、私はまた涙を流すだろう。
心から好きだと思ってしまうだろう。
愛を知ってしまったから、君を見ると苦しくなる。
何度君の声を聞くたびに、日に日に遠くに感じる。
君とはもう付き合わないんだろうなって思ってしまう。
あんなに素敵な思い出を上書きできる人はいないだろう。
だけどもう、一度交わってしまった私たちは、大人になるにつれて離れていくしかないのだろう。
君と経験したたくさんの思い出を、これから君は他の人とも経験するだろう。
それが君にとっての幸せだとしても、私はきっと素直に喜べない。
だからどうか、私の知らないところで幸せになって。
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