いつもの風景は幸せの風景
ゴールデンウィーク。
連休はざまの平日。
カレンダー通り出勤すべく見慣れた最寄り駅への道を歩く。
いつもと変わらないその道で、ふと、学生らしきカップルが手をつないで駅へと向かっているのが目に入った。
私が住むこの街は、ザ・住宅街という感じの街。
基本的にはファミリー層が多く住んでいるので小さい子供や若い夫婦は見かけるけど、学生の一人暮らしは少ないと思う。そんな場所で、朝、手を繋いで駅へ向かう若いカップルを見るのはめずらしい。
ちょっとくたびれたサンダルを履いている様子から、彼氏の方はこの駅の近くに住んでいるのだろう。少し荷物の多い彼女の手を引き、後ろ姿からでも分かるほど幸せそうに歩いている。
勝手な予想だけど
きっと、付き合い始めたばかり。
私にとってはなんでもない日常の最寄り駅までの風景が、2人にとっては思い出の風景になるのだろう。
何を食べるかより、誰と食べるか。
どこに行くかより、誰と行くか。
どんな風景かよりも、誰の隣で見た風景か。
そうやって過ごした時間が幸せを感じさせてくれる。
何をしなくても
どこに行かなくても
心を満たしてくれる時間があれば
それが幸せなんだと思う。
幸せの理由は“あなた”
満たされる時間は“ふたりの時間”
そんなふうに、今、この瞬間に満たされているであろう2人を見て、甘くてくすぐったい気持ちを思い出す。
一緒に歩いた通学路も、バイト先の休憩室でのくだらない会話も特別だった。
社会人生活も長くなり、自分で自分の機嫌を取りながら毎日仕事をして、気がついたら大抵のことはひとりでできるようになっている。
ひとりの時間はもちろん楽しい。
それでも、誰かと一緒にいて “ああ、この人が好きだなぁ” と、しみじみ思う気持ちがちょっと恋しい。
そんなことを思いながら通勤電車に揺られている。
残りのゴールデンウイークも晴れるといいな。