“日本でいちばん早い夕焼け”を中継したい!!!
2022年4月からスタートした新番組「ニュースLIVE!ゆう5時」(月~木 午後5時から総合テレビで放送)。この中で、ある”挑戦”が行われます。
それは、住む人もいない、日本の“端っこ”にある島から“日本でいちばん早い夕焼け”を生中継する、というもの。
この企画を進めてきたのは、入局2年目のディレクター、つまりワタシです。中継を担当するのは初めて、なのに、本番まで良くも悪くもドキドキの日々を送ることになりました。いったいどんな”挑戦”になるのか、中継本番までの舞台裏をお伝えします。※放送予定は4月25日(月)です。
はじめまして、2年目ディレクターのイケダです!
今回巻き起こる騒動をお伝えするのは、2021年に入局したディレクターのイケダです。去年4月にオンライン研修を受け、5月から夕方の報道番組に配属されました。番組では、その日のニュースを解説委員が詳しく読み解く「解説コーナー」や、外国人児童生徒の支援に関するVTR企画などを担当し、ディレクターの仕事を覚えようと日々奮闘中です!
上司の無茶ぶり企画とは…
配属からはや1年、担当番組が終了し、新しい番組としてスタートすることになりました。番組名は『ニュースLIVE!ゆう5時』!
キャスターは、「おはよう日本」を担当してきた高瀬耕造アナウンサーと、「うたコン」や「サキどり」を担当してきた片山千恵子アナウンサー。リポーターには、宮﨑慶太アナウンサー、佐藤あゆみアナウンサー、森田茉里恵アナウンサー。
(ちなみに、宮﨑アナウンサーは前任地の秋田局時代、この広報局noteで「昆虫愛」を惜しみなく披れきしています!)
「ニュースLIVE」の名の通り“ライブ感”を大事にして旬のニュースを独自の目線でお届けします!
番組の立ち上げにあたり、上司がコンセプトの打ち合わせや新コーナーの準備に追われている様子を横目に、一年目の私は自分に何ができるか思い浮かばず、時だけが過ぎていきました。しかし、新番組スタートもあと1か月に迫る頃、私の及び腰を察知した上司から突然指令が。
「ちょっと、お願いしたい仕事があるんだけど(ニヤリ)」
何か面白いことができないか…そうだ!“あの島の生中継”だ!
『ゆう5時』がコンセプトに掲げている「ライブ感」。これを象徴する企画は何だろうか、、、熟慮を重ねた風の上司がいいました。
「ゆう5時だから、やっぱり夕焼けかなあ」(結構単純…/イケダ心の声)
しかし、ただの夕焼けではないのです。課せられたミッションとはズバリ、「“日本でいちばん早く見られる夕焼け”を中継する」 というもの。
日本で一番早く日が沈むということは、つまり日本の一番東ということだな。ふむふむ…北海道?…と地図を眺めていると…
ん???東京都に、一番東の島がある!?
なにやら、小笠原諸島からさらに1,200km離れているらしい。私の人生で、社会の授業でしか聞いたことのないその名前…は『南鳥島』!?
そもそも南鳥島とは…
NHKのホームページで情報を探すと…お!これだ!
島との行き来は、駐在員の交代と物資輸送のために、航空機が飛ぶ機会に限られるそうです。
本当にできるのか??立ちはだかる壁
南鳥島で中継って何をすれば?そもそも、ちゃんと中継もやったことのない私。やる気はあるものの何から始めればいいか、全く浮かびません。とにかく気象庁に相談を持ち掛けてみることにしました。
え!?本当ですか!!??
え!!??ネットが使えない!!??
中継では、現地で衛星インターネット回線を用意して、スマホの映像と音声をアップロードし、通信衛星を介してNHKにデータを送り、その映像をご家庭に届ける準備が必要です。
現地の職員の方に撮影のご協力をいただいても、インターネット回線がないと、その映像が、届かないのです…。
これはなんとかして、中継用のインターネット回線を整えねばです!
宇宙から“可動ビーム”照射!?ネット環境を整えよ!!
まずは、ネット環境を整える必要があると気づき、災害などの緊急時や船舶でのインターネット利用を可能にしてくれる衛星通信サービスをあたってみることに。
しかし、東京から約2000kmも離れた南鳥島で利用できるサービスは見つからず撃沈。なんと、南鳥島での中継は国際宇宙ステーションや南極からの中継以上に難しいそうなのです。
このまま諦めるしかないのかと思いきや、2週間後、実現可能性の高い提案をしてくれる会社が現れました。しかも、その驚きの提案内容に度肝を抜かれます。
驚きの切り札の名は…「可動ビーム」!!
南鳥島は、多くの通信衛星のアンテナがカバーする範囲の外なんです。
可動ビームとは、通信衛星に搭載されているアンテナを動かして、通常電波がないところに焦点を向けるというもの。4月は、たまたまその可動アンテナつきの衛星が使えるので、南鳥島に電波を送ることができるというのです。
技術関係の知識が乏しく仕組みもさっぱりの私ですが、可動ビームというパワーワードを聞いて、何やらすごいことが起こっている!と理解できました。いまさらながら、とんでもないことを起こせるのでは!という期待が高まる一方、これだけのご協力を得て失敗はできないという責任感と同時に、不安もむくむくと湧き上がってきました。
いざ気象庁へ!しかし輸送に問題でさらなる壁が…
ネット環境の目途がつき、いざ気象庁へ。正式に中継へのご協力のお願いにうかがいました。
しかし、新たな問題発生。
…!!!
4月4日の新番組スタート初日に中継するには、機材の輸送がすでに間に合わないことが発覚。現実は甘くないと思い知らされました。しかし、ここまできて諦められません。次の定期便で機材を運んでもらい、4月25日(月)の放送を目指すことになりました。
気象庁職員も加わり、いよいよ本格始動へ
この企画が始動してはや1か月。当初中継を予定していた4月4日「ゆう5時」の放送初日に、いよいよ中継の準備が本格的に始動しました。
実際に現地に向かう職員の方にもご協力頂き、通信会社の担当者から衛星端末の操作や中継システムの使い方を説明してもらいました。
業務で忙しい現地の職員の方が撮影で困らないよう、入念な準備を行いました。
なんとか機材の準備が整ったものの…!!
その後も機材同士の接続の問題や、強風に耐えられる機材がない!などプチトラブルを乗り越えること1週間、最終的に「これでお願いします!」と機材を気象庁に届けたのは、約束した時間の1時間前でした。
しかし、数日後気象庁から連絡が。なんと、台風1号の発生で機材輸送を予定していた航空機が欠便になったと言うのです。
憎し台風。しかし、これが自然の力。そして、まさに、その予報や注意喚起のために、気象庁の職員の皆さんが必死で働いているのだと、改めて気象関係の仕事の偉大さを思い知ることになりました。
機材、南鳥島に無事到着!
しかし、天の助け、なんと放送約1週間前に航空機が飛んだとの連絡が!
そして、南鳥島に到着した職員の方が、現地の写真を続々と送ってくださいます。
2か月前に、上司のムチャブリを受けるまでは、その存在さえはっきり認識できなかった「南鳥島」。しかし、その日から今日まで、様々な方々の協力を得て、徐々に私の心は、南鳥島一色になり、さらに、送られてくる実際の写真を見ると、もう「南鳥島に住みたい!」と思うくらい、なんだか愛着がわいてきました。
果たして、運命の中継は無事放送できるのか!!??
さて、このあといよいよリハーサルを行い、この後、無事に中継が放送できるのか!?
視聴者のみなさんも、どうか一緒にこの前代未聞の夕焼けを見守っていただけるとありがたいです!
【南鳥島中継:日本で一番早い夕焼け】
[放送]
4月25日(月)午後5:00 [総合テレビ] ニュースLIVE!ゆう5時内