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“パソコンの大先生”アナウンサーは、なぜ手料理を作りまくるのか

どうも、“パソコンの大先生”こと、金沢局のアナウンサー・松岡忠幸です。

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1997年に大学の授業で初めてパソコンとインターネットに触れて一気にハマって以来、暇さえあればパソコンをいじっていました。秋葉原のPCショップの店頭に立ってマイクでお客さんを呼び込むバイトなどもやっておりました。

どちらかというと、アニメ大好きコスプレアナウンサーとしての顔の方が知られているかもしれません。

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「あさイチ」の推し特集は、趣味がそのまま仕事になってとっても楽しかったです。

▼推し歴25年の私が4万5060件の
“推しアンケート”ととことん向き合った話▼

そんな多趣味な私ですが、食べ物にはほとんどこだわりがありませんでした。何を食べてもおいしいと思う幸せなタイプです。料理もほとんどしていませんでした。

そんな私が、今年度から金沢局に単身赴任で転勤して以来、三食すべて自炊、しかも地元の旬の食材をできるだけ取り入れるという生活を続けています。

キャスターを担当している夕方6時台の石川県向けニュース番組「かがのとイブニング」に「まつおか旬の味」というコーナーを作って、手料理写真を週1回紹介しているのです。

また、NHK金沢放送局のTwitterアカウントで手料理写真に絡めて番組の案内などをしています。そんな手料理のほんの一部です。

じつは、こうして手料理を作りまくる裏に、“パソコンの大先生”としての戦略があるというお話です。


プライベートっぽいコンテンツへのニーズ

放送と通信の融合の時代を迎えて、インターネット大好きな“パソコンの大先生”としてプライベートでコツコツと磨いてきたスキルが、職場で突如として求められるようになりました。“アニメ好きコスプレイヤー”と同じく趣味を仕事に生かすチャンスということで手を挙げて、金沢局に転勤するまでの1年間、アナウンス室とデジタルセンターを兼務していました。

デジタルセンターは、公式SNSアカウントやNHKプラスなど、NHKのデジタルサービスの管理や運用を担う部署です。

そんな特殊な立場でもろもろのデータを分析する中で突きつけられたのが、SNSというどこまでも「個人」にフィーチャーしたメディアでは、アナウンサーの「プライベート」に踏み込むコンテンツにこそニーズがある一方で、プライベートをどんどんさらすという消耗戦は、少なくともNHKアナウンサーにはなじまないという問題です。

民放アナウンサーのみなさんは、NHKよりもさらに状況が進んでいます。アナウンサー一人一人が公式SNSアカウントを持って、通信の世界でも存在感を発揮すべしというミッションと向き合って試行錯誤している方も多い状況です。

NHKアナウンサーは、まだそこまでの状況には至っていません。しかし、放送と通信の融合はすさまじいスピードで進んでいます。

NHKアナウンサーのデジタル切り込み隊長を自任する私としては、プライベートっぽいコンテンツへのニーズを満たしつつ、開示するプライベートの範囲が制御しやすく、消耗戦にならないで済むコンテンツについて考え続けていました。

「単身赴任生活の皿の中」という一石二鳥のアイデア

そしてたどりついたのが、「単身赴任生活の皿の中」だったのです。

皿の中だけの写真なら、意図しないものが映り込むリスクは極めて低くすみます。自分で作る料理なので、自分が他人に見せたいと思える皿が完成した時、食べる前にスマホで撮影するだけです。ほとんど負担がありません。食事は絶対に必要なので、普通に生活する中で自然とコンテンツを量産できます。

CGも少々かじっているのですが、手料理の写真を撮影して眺めていると、現実の料理のディティールの細かさに、「テクスチャーすごい!これをCGで作ろうとすると大変だなぁ。リアル料理って楽!」と思ってしまいます。

また、デジタルセンター時代、配信するにあたってのこまごまとした権利処理に悩まされたので、手料理はそのあたりの問題が基本的にないこともすばらしい特長に思えました。著作権や肖像権を侵害するリスクが極めて低いというのは、手料理写真の猛烈に大きな特長です。

自分の健康のためにも良いことだらけです。食に特に興味のない私は、放っておくとずっとレトルトカレーで済ませてしまいかねません。その方が安上がりですし。それが、これだけ手料理を作りまくれば、栄養のバランスはばっちりです。

自分のためだけに手料理を頑張る気にはなれないのですが、誰かに見てもらえる!となると、根っからの見せたがり屋の私にとって、大きなモチベーションとなります。

検索上手で手先が器用なら見栄えのよい料理は作れる

問題は、コンテンツとして披露するに値するレベルの見栄えの良い料理が作れるかですが、勝算はありました。インターネット上にはありとあらゆるレシピが公開されています。“パソコンの大先生”にとって、見慣れない食材のレシピを探すのなんて朝飯前です。

また、ヲタク趣味の人にありがちな傾向として、むやみに手先が器用なので、レシピさえあれば、加工はどうにかなるだろうと思ったのです。

石川県オリジナル品種のりんご「秋星」を使ってフルーツカービングに挑戦しようと思い立った時も、挑戦2個目でそこそこ見栄えする感じのクオリティーにたどりつきました。

コスプレ用の小道具を自作するために発泡ポリエチレン製の板を切り出したりするのに比べたら簡単です。塗装もしなくていいですし。

思わぬ化学反応「なすそうめんの謎」

こうしてコツコツと手料理を頑張って放送やSNSで紹介していると、視聴者のみなさんから石川県ならではの食材や郷土料理についての情報を次々とお寄せいただけるようになり、手料理写真を見るのを毎週楽しみにしているという声も届くようになりました。

転勤してきた私の視点と地元の食文化の出会いから、思わぬ化学反応が生まれることもありました。石川県の郷土料理「なすそうめん」の存在を視聴者からの情報提供で知ったので、いざ作ろうとしたところ、教えてくれる人によって味の方向性がまったく違うことに気付いてしまったのです。

この謎を解き明かすべく、とりあえず作ってみたなすそうめんの写真を持って、

「転勤してきた私が想像で作ったなすそうめんなんですけど、これで合っていますか?」

と聞いて回るロケを敢行。

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その結果、なすそうめんを「おかず」とするか「主食」とするか家庭ごとに違っているので、求められる味の方向性が大きく分かれているという結論にたどりついたのでした。われながら、なかなかおもしろいリポートを放送することができました。

試行錯誤は続く

この「単身赴任生活の皿の中」という方法が、極めて特殊な条件でぎりぎり成立しているに過ぎないことは自覚しています。他のアナウンサーにそのまま応用できるわけがありません。

私も、単身赴任という状況だから気楽に挑戦できているだけで、家族の食卓を披露するとなると一気にハードルが上がります。ただ、世界中のアナウンサーが手探りでSNSと向き合っている状況なので、わずかな可能性であれ、その道をかき分けて進んでみるしかないと思うのです。

ということで、私の試行錯誤を見守っていただけるという方は、NHK金沢放送局のTwitterアカウントをフォローしていただければと思います。金沢局のアナウンサーとして、石川県の豊かな食文化を広く発信する役割も果たせるといいなと思っています。

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そして、石川県のみなさん、平日夕方6時10分からは「かがのとイブニング」をご覧くださいね。石川県の味についてのアドバイスは、 #かがのとイブニング をつけてSNSでつぶやいていただくか、NHK金沢放送局のサイトからよろしくお願いします。

▶▶NHK金沢放送局 まつおか旬の味 教えて!石川県の味◀◀

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