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男女に聞いて回ったら、いろんな想像力が働いた話【#生理の話ってしにくい】

「#生理の話ってしにくい」…?

そりゃ、しにくいですよね~?
男の立場からすると、なんだか触れてはいけないテーマな気がするし、仮に女性に直接そんな話をしたら相手の受け止め次第でセクハラになってしまうという恐怖感もある。でも実は、いろいろ知りたいし、聞いてみたいというのが本音でした。

かくいう私は、入局11年目のディレクター。濱田悠歩と申します。この6年間、スポーツ番組を作る部署で働いてきました。

画像 筆者
濱田悠歩ディレクター

生理については、教科書で習うぐらいのことしか知らなかった私。今回ご縁あってこの記事を書くミッションを与えていただいたのですが、接点のなかったテーマだけに何を書けばいいのかさっぱり分かりません…。

しかしそのうち、ある考えが浮かんできました。

これってもしかしてチャンスかも!
気になってた生理の話をみんなに聞いて回っちゃえ!

大切に扱う必要のあるテーマだと承知の上ですが、実は興味本位からスタートしていたことをここに白状します。

▶▶#生理の話ってしにくい◀◀


 「生理を例えるならば、イチローにインタビューする前日のようなものだ」

 「記事を書かないといけなくなっちゃってさ~。生理について聞かせてもらえない?」

仕事だということを盾にして、私はこれまで誰とも話すことのできなかったテーマを性別問わず同僚たちに聞きまくりました。ざっと30人ほど。
中でも生理を経験してきた女性の皆さんは「隠すことでもないし、いいよ!」と快く応じてくれてビックリでした(協力してくれた皆さん、ありがとうございました!)。

まず印象的だったのが、スポーツの部署で共に働いたことのある女性ディレクターからの上記のことば。「生理ってよくわからない」「生理のときはどんなふうに辛いの?」と質問を並べる私に、こう教えてくれました。

ん???イチローに?インタビュー? 

よくよく話を聞くと、こういうことでした。

スポーツを取材する者にとって、イチローさんのようなビッグネームはぜひとも話を聞いてみたい存在。もしインタビューできるとなれば、それはとても喜ばしいこと。

でも実際にインタビューを行う前日になると、「限られた時間の中でミスはできない…」と心が重くなって、なんなら逃げ出したくなる感じ。生理も、女性にとっては喜ばしいことだけれど、(体調不良やもろもろのケアを考えると)憂うつになってしまうこともあるのだ、と。

なるほど…。決して生理を手放したくはないけれど、手放してしまいたいような。でも他のみんなもさまざまな事情を抱えているわけだから、自分だけ弱音を吐くことはしたくない、という感じでしょうか。

もし仮に、毎月毎月この先何年もイチローさんにひとりでインタビューし続けることになったら、私は何を思い、どう行動していくことになるだろう。この例えを与えてもらったおかげで、自分の中で少しずつ想像力が働き始めました。

「弱った時、困った時は、さりげない優しさがありがたい」

話を聞き進めると、女性ディレクターたちは知られざるところでいろいろ経験していることも教えてくれました。

選挙の開票速報を伝える緊張感あふれる当日、生理で具合が悪くなってしまったものの薬を持っておらず、苦しみながら深夜までメインディレクターを務め上げた人。

車を運転して遠く離れた取材先に向かった時、下腹部が強烈に痛み出し、泣きながらひとり運転して帰った人。

会議で長時間拘束され、経血が服についてしまって焦った人。

直属の女性上司に体調不良を相談するも、その上司が体のつらさをあまり経験したことがなかった人だったため、共感してもらえず追い詰められた人。

みんなふだん口にしていないだけで、いろいろあるんだな…。そんな中で、こんなことを話してくれた女性ディレクターがいました。

「以前ロケの最中に生理痛がひどくなってしまい、男性カメラマンにこそっと打ち明けた。もし私が倒れてしまったら続きを撮ってほしい、と。職場の男性に生理の話をするのは初めてだったけれど、そのカメラマンは私を気遣いながらも何事もなかったかのように次の準備を着々と進めてくれた。その対応がありがたかった」

この話を聞いて、ちょっと共感している自分がいました。似た経験をしていたからです。

東京オリンピック前に番組を制作している時のこと。私は新型コロナ陽性者の濃厚接触者となってしまいました(結果、陰性で問題はありませんでした)。

しかもそれが発覚したのは、編集マンと共に作業を始める初日。VTR試写の日程も迫る中で、さぁこれからやるぞ!というときに、私が2週間の隔離に入ることになり、予定を台無しにしてしまったのです。

しかし編集マンや上司にその事実を打ち明けると、「大丈夫。まずは検査を受けて、その次に対応を考えよう。できる限りサポートする」とサラリと応えてくれました。

コロナ禍というちょっと特殊なケースではありますが、迷惑かけてしまう心配や精神的なきつさを抱えているときに、さりげない優しさに救われた、という経験は上の話と共通点がある気がします。

さらに、こんな記憶もよみがえりました。

震えながら自分のことをさらけ出した、あの日。私が職場で初めてゲイだと告白した日です。

本当の自分を押さえ込んで多くの時間を過ごすのも苦痛だったし、雑談や飲み会の場で共感できない話に作り笑顔で合わせることも、もうしたくなかった。

そんな思いから私は部署の同僚たちに自分のことを打ち明けようと考えたのですが、一度腹をくくったつもりになっても、いざ伝えるとなると怖さでいっぱいになりました。

このせいで腫れ物になってしまわないか。
逆に居心地が悪くなって打ち明けたことを後悔してしまうのではないか…。

でも、大丈夫でした。

後日個別にあたたかいメッセージをくれた人もいれば、今までと何も変わらない感じで自然に話しかけてくれる人や、同じように誰にも話せなかった悩みを私に打ち明けてくれた人もいました。

もしかしたら受け入れられない人も、中にはいたかもしれませんが、声を上げてみると意外と味方は周りにいるものだと実感したのです。

生理の話もジェンダーの話も、まだまだ分厚い壁が立ちはだかっているのが現状だと思いますが、もしかしたらその壁は思ったより低いのかもしれません。

(ただ、あくまでこれは私の話です。それぞれが抱える事情を公にしたくない人や、公にできない人もいることを前提に読んでいただけると幸いです。)

「性別関係なく、いい職場で働きたいよね」

男性ディレクターたちにも10人ほど話を聞いたところ、多くの人が私のように、生理について関心がないわけではないが、よく分からないという人たちでした。

そこで私が聞いて回ったことをシェア。生理を経験する人たちはひとりでいろいろ抱えがちなこと、職場で困っていても声を上げにくいこと、一方でそっとしておいてほしい人もいること…。すると、こんな反応が返ってきました。

 「それ、我々男性も同じじゃない?」

 仕事に関わる個人的な悩みや、病気・体調のことって、周囲に相談しづらい…。

家庭の事情で仕事を休むことや、男性の育休取得、上司にまだ言いづらい…。

プライベートや結婚のこと、聞いてほしくないことたくさんある…。

いろんな声が聞こえてきました。

もちろん女性特有の生理と並列にして考えられるものではありませんが、それぞれ事情を抱えながら生きているのは同じ。結局、心身ともに健康に働くためには、職場環境ってめっちゃ重要だよねという話に着地しました。

自分のしたいこと、自分が困っていることを発言しやすい環境。役職や立場などにかかわらず互いに配慮し合える環境。きっとそんな職場だと、性別関係なく居心地のよさを感じられるのだと思いました。

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生理の話ってしにくい。だけど、いざ話しをしてみると多くの発見がそこにはあって、いろんな想像力が膨らんだ気がします。

あなたも、身近な人と一度話してみてはどうでしょうか。

ディレクター・濱田悠歩

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