歴史が苦手な私が、 コロナ禍で大河ドラマ「青天を衝け」の広報担当になった話。
はじめまして。NHK広報局がはじめるnoteの記念すべき1回目を担当させてもらうことになりました。
みなさん、「青天を衝け」は、ご覧いただいておりますでしょうか。埼玉県の農家に生まれた渋沢栄一が、時代に翻弄され、挫折を繰り返しながらも挑戦を続け、やがて近代日本の礎を築いていくというストーリーです。番組は、放送のほかNHKプラスでもご覧いただけます。NHKプラスでは、放送後1週間は、見逃し配信も実施していますので、まだ見ていない!という方は、是非ご覧ください。
詳しくは、大河「青天を衝け」公式ホームページ (いきなり、宣伝っぽくなってしまい、すみません。広報担当なので)
憧れだった大河ドラマの広報
NHKの番組の広報は、通常、一人の担当者が複数の番組を兼務、または、状況に応じてその都度、担当が割り振られることになっています。しかし、『大河ドラマ』と『連続テレビ小説(朝ドラ)』だけは例外で、年間をとおして専属の担当が置かれています。放送期間が長期に及ぶこと、規模(出演者、スタッフなど)が大きいこと、そしてNHKの看板番組の一つであり社会的な注目も影響も大きい、ということがその理由です。
私は、いわゆるこの“大河・朝ドラの広報担当”にずっと憧れをもっていました。NHKで働くからには、誰もが知っている(であろう)これらの番組に関わる仕事をしたいと思っていました。
2020年の夏に、念願の大河ドラマの担当となったときは、本当に嬉しかったです(その時は、まだこの仕事の重みや大変さを全然わかっていませんでしたが・・・)。
ドラマ広報の仕事とは
大河ドラマの広報業務は、多岐に渡り、広報はチームで取り組んでいます。私は、主に ▼メインビジュアルポスターやリーフレットなどの広報ツールの作成、▼公式HP・SNSの運用、▼ドラマゆかりの自治体などの窓口、▼NHK各部局との広報窓口、▼展示イベント、▼広告展開、などを担当しています。
大河ドラマ「青天を衝け」公式Twitter
公式Instagram
広報としての初ミーティングは「新型コロナ対策レクチャー」
「青天を衝け」の担当になって、初めて出席したミーティングは「新型コロナウイルス対策レクチャー会」でした。産業医の立会いのものとで、安全にドラマの撮影を進めていくには、どういうことに気を付けていけばいいのか、実際にスタジオを見ていただきながら、対応を検討するというものでした。新型コロナウイルスの問題は、ドラマ自体の撮影はもちろん、ですが、広報にも大きな影響がありました。
●放送開始時期の後ろ倒し(放送開始が2月14日と決まったのは10月)
●前作の終了から『青天を衝け』の開始まで1週間という本格的なPR期間の短さ(通常は12月上旬に前作が最終回を迎え、次作は新年に入って放送を開始するので、1か月ほど期間があきます)
●撮影現場の密を避けるため、現場に入る広報カメラマンの人数も最低限に。また、新聞や雑誌など、様々な媒体の記者に集まってもらっての取材会や会見も難しい。
●出演者は、本番以外は基本的にマスクをしており、距離を保っているため、広報用の写真が撮りづらい
などなど。
「麒麟」と「青天」のはざまで
前作の「麒麟がくる」も、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言で撮影と放送が一時休止しました。8月末からの放送再開後、「麒麟がくる」広報チームが、どうにか盛り上げようとしている中で、次の「青天を衝け」をどうPRしていくか?ということには本当に頭を悩ませました。NHKの広報としては、自分が担当している番組だけが見られればいい、ということではもちろんありません。
「青天を衝け」広報チームとして、放送開始に向けて着々と準備を進めていましたが、異例づくしの中で、次回作のPRは手探りでした。
メインビジュアル決定!
流れが変わったのは、12月にポスターのメインビジュアルを解禁したときだと思います。吉沢亮さんのビジュアルのすばらしさに撮影、題字、アートディレクションが加わって、大きな反響がありました。このことをきっかけに、少しずつ、いよいよ来年は・・・という機運が生まれてきたように思います。
キャッチコピーに使った「仁なる者に 敵は無し」という言葉。これは、ドラマに関わるすべてのスタッフに呼びかけ、寄せられた100を超える案の中から広報チームとドラマの制作統括で議論して決めたものです。
選考にあたっては、コロナ禍で大変な思いをされている方々に、どのように響くのかということを、強く意識しました。今も一生懸命頑張っている人に、もっと頑張れ、とは言えない。でも、渋沢栄一の人生がそうであったように、誠実に真心をもって今できることをやっていけば必ずその思いが届く。そのことを伝えたいと、渋沢栄一本人が好んで用いていた言葉の一つ「仁者敵無」から引用しました。結果的に、ビジュアルとキャッチコピーが相まって、たくさんの人の心に届くものになったと思います。
歴史が苦手な私もこれでOK…“青天ナビ”はじめました
SNSの運用をはじめてから、今までずっと感じているのは、フォロワーの方々のありがたさです。ドラマ自体もとても熱心に応援してくださり、その熱量、パワーは本当にすごいと思っています。可能な限り、コメントはすべて読ませていただくようにしていますし、「 #青天を衝け 」でも頻繁に検索して、どのようなことがつぶやかれているか、参考にさせていただいています。おそらく、皆さんが思われる以上にドラマスタッフはコメントを見ていて、たくさん勇気づけられています。
印象的だったのは「今回初めて、大河ドラマをみてみようと思う」「歴史苦手だけど、見てみようかな」というコメントが多いこと。実は、私も歴史がめちゃくちゃ苦手なんです。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、今回の大河ドラマのHPやSNSは、意識して、これまでのものよりも、少しとっつきやすくしています。
「 #青天ナビ 」の取り組みもそういう意識から実施しているものです。「“追鳥狩”(おいとりがり)って何?」「“いやんばいす”ってどういう意味の方言?」など、ちょっと難しい歴史用語の解説や小ネタを、放送中、その言葉が出たタイミングで、リアルタイムに公式Twitterでつぶやいています。
これをきっかけに、幕末からの時代に興味をもったり、歴史が好きになってくださったりする方が増えると嬉しいです。
放送開始の前夜に…
放送開始日の前日、2月13日午後11時8分ごろ、福島宮城地震が発生し、震度6強を記録。各地で大きな被害がありました。
2月14日は、バレンタインデーということもあって、それにちなんだSNSの投稿なども色々と準備をしていましたが、地震の発生後すぐに、翌朝以降のSNS投稿をすべて一旦止めることを決定。その後も、予定どおり放送が出るかどうかもわからない状態が続きました。
(NHKの公開施設、プラスクロスSHIBUYAで、ファンの方に書いていただいたメッセージをハート型にアレンジ)
結局、SNSでの投稿を再開できたのは、14日(日)放送当日の午後4時。そこから、放送までにもう一度、最後の盛り上げができればと思っていました。結果的に、出演者の皆さん、ファンの皆さん、応援してくださる皆さんに、大きく盛り上げていただき、そのままの勢いで初回を終えることができました。
ちなみに、NHKプラスクロスSHIBUYAでは、放送開始に合わせて「青天を衝け」展を開催しました。展示は終了しましたが、プラスクロスSHIBUYAのホームページでも、栄一の藍色の衣装やセットを360°の動画でご覧いただけます。
「愉快に働け」 渋沢栄一の精神で
仕事で渋沢栄一さんのことを調べたりする機会もあるので、私自身、彼の考え方や格言に、すごく影響を受けているなと感じることがあります。
500もの企業を育て、600もの公共事業に携わった渋沢栄一。ある講演で聞いた話では「渋沢栄一は、とにかく朝から晩まで人の話を聞いていた」とのこと。自分とは全く比べ物にならないほど、多忙だったと思います(比べるのは本当におこがましいですが・・・)。どんなに忙しくても、人の話をしっかり聞ける広報担当でありたい・・・と思っています(修行の日々です)。
そして、これも渋沢栄一がよく言っていたといわれる「愉快に働け」の精神で、これからもたくさんの方に番組をお楽しみいただけるように広報展開を進めていきたいと思います。
大河ドラマ「青天を衝け」始まったばかりです。
長い付き合いになりますが、どうぞよろしくお願いします。
釘本聖司 広報局制作部(大河ドラマ「青天を衝け」広報担当)
福岡県出身。2007年にNHK入局。主に、イベント(全国各地で開催している公開番組など)の業務を担当し、2019年から現在の部署・広報局で勤務。(顔写真は恥ずかしいので、これで勘弁してください)