「読書国民の誕生」を読んで

出版文化・大衆文化研究家の永嶺氏による明治、近代日本における読書に関わる文化がどのように変化して行ったのかをまとめた一冊です。本書は、明治時代、特に明治30年代を中心とし、日本における活字文化、活字メディアがどのように変容して行ったのか、ということを豊富なデータをもとに描き出していく一冊です。本書は、読書国民、というキーワードとともに、明治30年代までに、どのように活字文化が発達していったのか、という社会状況についての話や、読書が人々にとってどのような意味があったのか、ということを、当時の広告などから明らかにしていきます。鉄道の発達による流通の変革、啓蒙活動としての読書の推奨、その中で公的な読む場所、民製の読む場所が、どのように立ち現れてきたのか、といったことが、当時の人の言葉とともに描かれます。近代日本における「読む」という行為の変化が、変化していくその姿が、生々しく描かれています。本書は、その内容が順序立って整理されており、当時の実像を思い描きやすくなっています。そして、現代に続く読書という習慣が、どのように誕生してきたのか、という歴史を感じさせる一冊です。

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