「ブラック・ジャックの解釈学」を読んで

内科医の國松先生による「ブラック・ジャックを現代の医学の視点で見返す」というのが本書です。漫画としての「ブラック・ジャック」を古典として読み解き、ブラック・ジャック(ひいては、手塚治虫先生)の意図を探る。また、現代の医療と当時の医療とを比較し、現代の医療では、どのように診断されるのか、ということを分析、記述していくのが、本書です。本書は内容から分かるように、医学書なので、一般の読者からすると、調べないと分からない言葉というのが多数出てきます。ですが、医者が、どのように患者の診断をするのか、というのが、著者による「再診断」を読んでいると理解ができる、という点が面白いところだと思いました。また、現代医学からの整理から、ブラック・ジャック、手塚治虫先生の意図の解釈や「慧眼」が分かってきます。ここから読み解かれていく手塚治虫先生の描写力の凄さ(普遍性、先見性)は、ただただ感嘆するばかりでした。

「心ブロック」を解説した章では、手塚治虫先生の凄さであったり、自分が常識的に考えていた「ストレス」というものの概念が揺り動かされました。「Happy heart syndrome」のように、ポジティブな出来事によって、病気が引き起こされることもある、というのは、ある種、衝撃的な内容でした。普段の生活でも、嬉しすぎて体調悪くなることは、ここで述べられたことを支持しているな、と考えさせられました。

本書は、医学的な見地から分析を行なっていくというスタンスとブラック・ジャックへの敬意に満ちていて、好きな人は読むべき一冊だと思いました。

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