「格差の自動化」を読んで

ニューヨーク州立大学オールバニー校のユーバンクス准教授による効率化のためのデジタル化がどのように監視・処罰のための仕組みとして機能していくのか、ということを実例から伝える一冊。著者たちの家族に起きた出来事が、いかに普通のことなのか、デジタル化の蜘蛛の糸に捕まるとどういう事態が起きていくのか。その体験から、アメリカで現在進行している福祉サービスの効率化を目的としたデジタル化、ハイテクツールの活用が、いかに、格差を自動化し、強化していくのか、という実例をインタビューを通して、明らかにしていきます。データを活用し、分析し、援助を必要とする人に適切な援助を行うためのハイテクツールという一見、説得力のある社会福祉システムの基盤は、逆に、格差を強化するために働き、私たちの社会の分断をさらに深いものにしている、という深刻な現実を本書は暴いていきます。データの中に埋め込まれた私たちの偏見という問題。貧困とは特殊な問題であるという思い込み。著者のこの事態を冷静に分析をし、この自動化された不平等がいかに社会を傷つけているのかを訴えます。最後に、私たちがいかにこの問題を解決していくのか、そのための宣言を著者は読者に投げかけています。その宣言をどのように捉えるのか、現在進行しているデジタル化をどう考えていくのか、それは、社会福祉に関わらず、データを活用しようとしている全ての分野にとって、重大な問いとなっているのではないかと思いました。

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