「希望とは何か」を読んで

ランカスター大学教授、文学・文化理論家のテリー・イーグルトンによる「希望」についての考察する一冊。本書では、著者の希望論を希望に関連するさまざまなキーワードを俯瞰しながら、希望とは何かをシェイクスピア、キルケゴール、ヴィトゲンシュタインなど、幅の広い領域から多くの文献を引きながら、論じていきます。本書では、まず、希望という言葉としばしば同一視される楽観主義を明確に希望から引き離していきます。楽観主義における基盤の薄さ、現在に対する責任のなさを指摘し、次に、希望とは何か、ということを論じていきます。希望がなぜ徳となりうるのか、そのことを数々の文献を参照しながら、考えていきます。ここでは、希望とは何か、希望の性質が語られていきます。ここには、希望の論理的な構造、希望がなぜオプティミズムと違うのかという事実を明確に描いていきます。希望の源泉となる葛藤など、そのありようを述べます。最後には、著者の希望論が二つのテーマを下敷きにし、語られていきます。ここでは、信頼と言葉というものが重要なキーワードとして現れてきます。そして、希望というものを個々人から見たものと、全人類的に見たものとして論じていきます。本書では、オプティミズムなき希望とは、どのような希望なのか、それがなぜ今語られなければいけないのか、ということを全体を通して示しています。この希望というのが、現在になぜ求められるのか、を本書は問いかけています。

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