「言語の起源」を読んで

「ピダハン語」の研究で有名な言語学者ダニエル・L・エヴェレットによる「言語の起源」をめぐる一冊。言語の起源という問題に対して、これまでに繰り広げられた様々な議論を引きながら、著者の研究、言語学、人類学、考古学、脳科学など、様々な知見を基に、問いを立て、答えを考えていく、という骨太な内容です。人の言語とは、どのようなものなのか。言語の役割とは、何なのか。これらの問いを、様々な知見から検討していきます。言語の特徴を言語学の観点、文化の観点などから、解き明かしてきます。言語は、ただ、文法、語用論などの言語学な観点だけでなく、ジェスチャーや、話し手と聞き手が属する社会(文脈)などを含めた全体の中で形作られる、ということを指摘します。では、なぜ、言語は、そのような形となっているのか。そのことを、ヒトの進化という流れの中から、導き出していきます。類人猿から、ホモ・エレクトゥスへの進化、ホモ・エレクトゥス、そして、人類がどのような足跡を辿ったのか。その中で、言語がどのような役割を果たしてきた、と考えられるのか。ホモ・エレクトゥスの集団におけるコミュニケーションとして、言語はどのような誕生しうるのか。そして、そのときの言語は、どのようなものと考えられるのか。そのことを明瞭に考えていきます。ホモ・エレクトゥスが、その活動の幅を広げていく上で行われる意図の共有、集団における慣習、そして、文化といった要因が、どのように結びついて、言語が生まれたのかというダイナミクスを描き出していきます。著者による説得力の高い議論は、この全体と部分が、互いに関係していく、という言語の変化を、非常に面白く描き出していきます。

言語のみならず、我々の文化、世界に対して、どのような考えを持ち、我々は他者と関わっていくのか。そのことも考えさせられる一冊でした。

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