「心にしみる皮膚の話」を読んで

こういう人のことを「人格者」というんだな、というのが、本書を読んで感じたことでした。医師として、人として、苦悩の中から、考え抜いて、そして、選択をして、出てきた答えを、また、考えて、と、その中から出てきた、優しい言葉を見て、なんて素敵な人だろう、と思いました。

著者である大塚先生の専門である「皮膚科」の話を中心に、医療との向き合い方であったり、死との向き合い方、医師と患者の関係性など、それぞれの立場で、「自分はこう思う」という読者の気持ちが動く内容でした。この本は、医師、患者、そして、患者の周囲と、病気というものに関わる人が読んでいると、良いなぁ、と思いました。考えて考えて、そして、寄り添う、という大塚先生の優しい言葉が、本当にあったかいな、と思いました。

本書の一つ一つのエピソードが、医学的な内容、著者の考え、著者の意見、実体験を踏まえて書かれているため、非常に読んでいて、気持ちが良い。「こころ」を大切にしているから、その文章も優しく、「自分のこと」として受け取れました。著者の過去の失敗の内省を、そこで終わらせずに、そこから学び取って、さらに良くしていこう、という姿勢は、なんてすごいんだ、と圧倒されました。

エピソードが、最初から、少しづつ広がり、そして第5章のエピソードに集約されていく構成は、引き込まれていくようでした。この魅せ方の巧みさも、本書の魅力でした。何度も読み返したい、そう思える、素晴らしい本でした。

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