「いつか来る死」を読んで

糸井重里氏と小堀医師の「死」についての対談をまとめた一冊です。死について考える中での「どう死ぬか」という死に方の話は、糸井氏の考えに対し、こういう場合もありました、という実例を出しながら、お互いにより思考を深めていく、という議論が広がっていきます。その答えがない中で、自分だったら、どう考えるのか、ということを、ゆっくりと本書は問いかけてきます。本書で見えてくる「死」は、決して特別なものとして姿を見せません。しかしながら、「普遍的」な姿でもありません。個々の人にとって、その人なりの「死」の姿が、その人を取り巻く人々、環境と共に立ち上がってくる。そのことが何度も出てきます。「〜〜すべき」と考えられているものも、この個別具体的な死の姿に対すると、それは当たり前な考えではありません。「死」について考えるとき、人生にとって大事なものは何か、ということを考えていく。それが、ひいては、自分が生きる、ということへと考えがつながっていく。「人は生きてきたようにしか死ねない」という小堀先生の言葉の持つ重さというのが、この対談で語られていることを象徴している一言だと思いました。人と人が生きるという当たり前のことを当たり前に考えない、その個別性を大事に考えていくこと。本書は、生きる、ということを考える上で何か参考になる一冊だと思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?