「文体練習」を読んで

フランスの詩人・小説家レーモン・クノーによる「ある日、バスで起こった出来事」を様々な文体で書いた一冊。ただ、単純な出来事を、様々な技法、文体などで、99通りの書き方で書いていく、という内容です。本書は、言葉の豊潤さというか、言葉の可能性を感じさせる一冊です。言葉遊びとも、知的な言葉の変奏とでも言うような、言葉を先鋭化させていく文章の流れは読んでいて、笑わされるところもあれば、これは何なのか、という衝撃を覚えます。訳者の後書きを踏まえて、文章を読み直すことにより、本書から、さらなる深みを感じさせます。フランス語と日本語の違いああれど、言葉というものがどういった可能性を持っているのか。言葉を使う、ということで、どういったことが可能なのか。そういったことを想像させる一冊となっています。本書は、読者を言葉の海に巻き込んでいき、自分の言葉をさらなる彼方に連れて行ってくれる一冊だと感じました。

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