「怒りの人類史」を読んで

ロヨラ大学シカゴのローゼンワイン教授による「怒り」の歴史を紐解く一冊。私たちは、何かに対し、怒っている。そして、その怒りは、どのように理解されるのだろうか。私たちが「怒り」を感じる時、それはどのような情動を「怒り」と言っているのだろうか。ここには、「怒り」というものが、様々な要素から構成されている可能性を表出させます。「怒り」という感情は、非常に幅のある感情であり、それがどのように機能しているのか、を本書では分析していきます。著者は、宗教、哲学、中世史、心理学、人類学など、様々な分野で怒りがどのように扱われているのかを分析していきます。怒りが、どのように暴力と結び付けられていったのか。現代で考えられる西洋世界で怒りが、どのように扱われていったのかを中心に分析が行われます。古代やセマイ族など、怒りが否定された社会。神の怒り。正当化された怒り。怒りが歴史の中で、どのように捉えられていったのかを、様々な文献を参照しながら、分析を進めていきます。そして、現代、我和の社会を取り巻く怒りは、どのように考えることができるのか。対立するグループの、それぞれの怒りは、どのように正当化されているのか。その動きを著者は、丁寧に分析を行います。それぞれの立場が、それぞれを正当化するロジックの共通点、そして、相違点。「日和見主義」の概念を通して、著者は、怒りをどのように理解し、どのように使うのか、ということを提案します。

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