「俳句の誕生」を読んで

俳人の長谷川櫂による「俳句」が生まれるまでの過程、俳句とは何か、近代大衆俳句に至るまでの過程と近代大衆俳句をめぐる問題を論じた一冊です。俳句を、その句が詠まれる瞬間に何が起きているのか、という考察から、俳句の中で何が起きているのか、ということを論じていきます。俳句の切れによる主体の転換という問題を俳句の定型(五拍、七拍の定型)と絡めて論じます。主体の転換という話題は、切れが生む空白を支えるものがなんなのか、という問題を切り開いていきます。切れにより、句は現実と心と、二つの世界を彷徨います。こうして、定型で表現される俳句には、複数の文脈が出現します。このような複数の文脈の出現を、新古今的語法として提示します。ここから話は、王朝から中世、中世から近代へと動いていきます。王朝から中世には、禅、中世から近代には、大衆化、というキーワードで、その変化を説明します。大衆化、というキーワードを、一茶は近代俳人かどうか、という議論から説明します。ここでは、一茶の俳句の特徴、近代をどう捉えるのかという問題が展開されます。この議論が、現代の俳句をめぐる状況へと繋がっていきます。大衆化、というキーワードの扱いにくさというものが、日本の状況とも関連していきます。現代の俳句をめぐる状況、現代の社会に対する問題を提示して、本書は終わります。本書は、俳句というものが、どのように生まれ、社会に受容されていたのか、現代における俳句の課題を浮き彫りします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?