「現代手芸考」を読んで

上羽、山崎らによる「手芸的なるもの」に様々な視点から迫る一冊です。手芸的なものとそうでないものを分けるものは何なのか。手芸とは何なのか。この問いを様々な視点、様々なアプローチで考えていきます。この問いを考えることに何の意味があるのか。著者らは、この問いを考えることが「ものづくり」の意味を考える上で重要である、と言います。手芸を捉えようとする様々な視点は、なぜ人はものを作るのか、という姿を浮かび上がらせていきます。ここに、「ものづくり」とは何なのかを考えるヒントが潜んでいます。どういった視点から手芸的なるものに迫っていくのか。著者らは、様々な事例から、「つくる」「教える」「仕分ける」「稼ぐ」「飾る」「つながる」という6つの視点で手芸的なるものに迫っていきます。ここから見えてくる手芸的なるものの複雑な姿が浮かび上がってきます。「女性性」などの価値観が、どのようにして、手芸と結びつけられ、なぜその価値観が薄れていったのか。趣味的であるがゆえに膨大な時間と技術がかけられる手芸と、商品であるがゆえに技術を求められない手芸。この手芸をめぐる様々な状況を含めて、手芸的なるものに迫っていきます。本書は、手芸とはこういうものである、という答えを提示しないが、手芸とは何なのか、を読者が考えていく助けになる一冊です。また、「ものづくり」に関わる人にとっては、自分が作る「もの」が、どういう意味を持つのかを考えるヒントになるのではないでしょうか。

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