「ヒトはなぜ自殺するのか」を読んで

オタゴ大学サイエンス・コミュニケーション・センターの所長のジェシー・ベリングによる「ヒトはなぜ自殺するのか」という問いに対する説明を行う一冊です。自殺という語ることが難しいものについて、著者は自身の体験を踏まえ、その語りにくさ、このテーマの難しさを説明します。そして、自殺に対する問いを一つずつ見ていきます。人間だけが自殺するのか、という問いを認知の面から考えていきます。そこでは、これまでになされた様々な議論を振り返っていき、話はやがて、生物の進化へと繋がっていきます。真社会性の生物における自己破壊的な行動という究極要因を提示します。アリやハチなどで見られる、自身を犠牲にし、集団に寄与するような性質を参考に議論を進めます。至近要因として、ロイ・バウマイスターの6段階の認知ステップを見ていきます。ここでは、自殺は、自己からの逃避として捉えられ、どのように心が自殺へ向かっていくのか、を説明します。このステップは、実際の日記を参照しながら、どのように進んでいくのか、ということも述べられます。自殺におけるメディアの役割・責任についても議論がなされます。メディアがどのように自殺を伝播させ、人に影響するのか、ということを議論していきます。話は、私たちの自殺に対するイメージに関する議論、宗教といったものも絡んでいきます。本書では、自殺に対する見方を提示することで、答えのない問いについて考えることを促さす一冊です。

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