「人は語り続けるとき、考えていない」を読んで

「子供の哲学」や「哲学カフェ」といった「哲学対話」といった活動を行なってきた著者による「対話とは何か」「考えるとは何か」といった内容を論じた本です。「対話と思考の哲学」という副題の通り、対話と会話の違い、思考と対話の関係、哲学対話とは何か、という内容を丁寧に考察していきます。

哲学的な対話とは何か、という問いに「問いが後退していく」対話である、という提示から「問い」というものが、どういう性質を持つものか、ということが示されます。一つの問いに対し答えようとすると、別の問い(よりメタ的な問い)に答えなければいけなくなる、というように、ある問いが無数の問いと繋がっていることを明らかにします。ここから、思考とは何か、という問いに繋がっていきます。ジョン・デューイの言葉を引用しつつ、思考とは、自分の予想や想定を超えた状況を問題状況と捉え、その解決をしようとする態度と表します。対話の問いでは、ものを空間的に、そして、時間的に、位置付けをし、意味づけます。また、「問いが後退する」ことで、さまざまなものと関連づけられ、対話の中で、新しさが見出されていきます。

次に、発話とは何か、ということから、対話を検討していきます。話すことは、音声を発するだけでなく、身振りも含めた、自己を生み出す過程であることを見ていきます。そして、対話とは、身振りを含めた言語表現を発言すること、そして、それに対し応答することであると、明らかにしてきます。そして、哲学対話が、環境とどのように関係するのか、ということを検討してきます。現代社会において、哲学対話は、なぜ重要と考えられるのか、そのことを見ていきます。

本書は、実践を基に考察が進められているため、圧倒的な説得力を持っています。他者との違いを認め、他者とつながり、自己を変容していくという対話の重要性は、現在社会において、重要な事柄であることが確認できる内容でした。

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